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苦い銭(ネタバレ)

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※本作のしっかりした批評が読みたい方は別のブログに言った方が良いザンス。

<どうでも良い前書き>


紋切り型の「社会問題」として扱われがちな題材の向こうに、
いつだってしょーもなく奥深い、人間なるものの業を映し出す。

宇多丸 ラッパー・ラジオパーソナリティー
※「週刊文春エンタ!」星取りより

真夜中の歩道や高層住宅のテラスや薄ぐらい廊下などに、
孤独な男女が黙って立ちつくしている。
彼らや彼女らは、その後、饒舌すぎるほど自分を主張し始める。
それがこの映画の荒々しくも繊細な魅力にほかならない。

蓮實重彦 映画評論家
※パンフより

なぜ酔っぱらいが女の子に絡むセリフがこんなにもスリリングで、
たんなるボタン縫いの単純作業からどうしても目が離せないのか。
ワン・ビンは映画の魔術を知っている。

柳下毅一郎 映画評論家
※パンフより


ワン・ビンは「現代中国の最も先鋭的な映画監督」と呼ばれているドキュメンタリー作家であり、信用できる映画評論家の柳下毅一郎さんが「王兵(ワン・ビン)を見ないというのは人生損してるようなもの」とブログで書かれるほど評価が高い映画監督でしてね。僕は人生で損をすることが何よりも嫌いなので、今までワン・ビン監督の「無言歌」「三姉妹〜雲南の子」「収容病棟」を観に行きまして。ううむ、ハッキリ言って「収容病棟」はスゲー面白かったものの、その長さ(上映時間237分!)には疲弊したし、他の作品はサッパリだったりしましてね…。

「趣味:映画鑑賞」の人間としては、いまだ青銅聖闘士レベルの僕ですよ、たぶん“黄金聖闘士=シネフィル”に到達するには、ワン・ビン監督作の良さをわからないとダメだと思うし、できれば理解できるようになりたいんだけど、なんか無理っぽくて。長そうで短い人生、好きなジャンルの映画だけ観たって良いんじゃないだろうか。そんな風に考えた僕は「もう観なくていいや」と諦めたハズだったんですけれども。「苦い銭」というタイトル&「働けど、働けど。」というキャッチコピーに、どことなく共感しちゃった…という不思議。キャッチの元ネタであろう「はたらけど はたらけど なお我が暮らし楽にならざり ぢっと手を見る」を詠んだ石川啄木が真面目に働いたことがないダメ人間だったことは置いとくとして。「現在の僕の“仕事面での苦境”を乗り切るヒントが隠されている」という特殊な電波を脳内で受信したので、前売り券を購入。公開から1ヵ月以上経った3月下旬、新宿バルト9「ちはやふる 結び」を観てから、渋谷のシアター・イメージフォーラムで鑑賞いたしました。

前売り特典は「お札の付箋」。本物のお金だったら良かったのに…(45歳の文章)。


劇場はシアター1で、10人ぐらいはいた記憶。









苦い銭



原題:苦銭 Bitter Money
2016/フランス、香港 上映時間163分
監督・撮影・編集:ワン・ビン
製作:シニア・バックマン、ニコラ・R・ドゥ・ラ・モテ、バンサン・ワン、マオ・フイ
撮影:前田佳孝、リュウ・シャンホイ、シャン・シャオホイ、ソン・ヤン
編集:ドミニク・オブレー
出演:シャオミン、ユェンチェン、シャオスン、リンリン、アルヅ、ラオイエ、ホアン・レイ、ランラン、ホウチン、ファン・ビン
パンフレット:★★★★☆(600円/デザインが素敵だし、前田佳孝さんのインタビューやコラムもタメになりました)
(解説)
15歳の少女シャオミンは、生まれ育った雲南省から長距離列車に乗り込み、遠く離れた東海岸の浙江省湖州にやってくる。この街は住民の80パーセントを出稼ぎ労働者が占め、シャオミンが働くこととなる縫製工場にも、彼女と同じようにさまざまな土地から出稼ぎに来た女性たちが働いている。経済急成長を遂げ、経済大国となった中、1元の金に一喜一憂する人びとが数多く存在する中国のもう1つの現実。シャオミンの湖州への旅からスタートしたワン・ビンのカメラは数人の女性たちの表情を軽やかに記録していく。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




60点


「やはり…ッッ (`Δ´;) ヌゥ」と冷や汗が流れましたよ。


僕の心境を代弁する烈海王を貼っておきますね(「範馬刃牙」より)。



パンフによると、中国では出稼ぎに行くことを「苦い銭を稼ぎに行く」と言うそうで。本作は、住民の80パーセントが出稼ぎ労働者という浙江省湖州の街を舞台に、「出稼ぎデビューのシャオミン→シャオミンが働く縫製工場にいたリンリン→その夫アルヅとの夫婦喧嘩!」という具合に被写体を次々と変えながら、急速に発展する中国経済を支える“世知辛い労働者事情”を描くドキュメンタリー…ってな調子。最終的には、低賃金に愚痴を言いながらも生活のために働く人たちが延々と映された挙げ句、出来上がった服をみんなで箱に詰めたりして終わってましたよ。

ここ数年の中国人と言えば、バブルや爆買いなんてイメージがありましたが、本作の出演者たちはそんな景気の良い話と無縁どころか、“景気の良さを支えるための劣悪な環境”から一生抜け出せないムードがムンムンでしてね…。日本に出回っている安い商品の数々はこういう犠牲があって成り立っているんだなぁと考えると、なかなか気まずい後味でしたよ。ただ、登場人物たちにバイタリティがあるので、それほど悲壮感が漂っていないのが面白いなぁと。

あと、これは誰もが思うところですが、被写体がカメラを意識してないのがスゲェなぁと。DV全開の夫婦ゲンカとか、よく撮れたと思う以上に、よく上映の許可がもらえたと思うんですが、撮影として参加した前田佳孝さんのインタビューによると、ワン・ビン監督は「被写体とすごく仲良くなろうとする」し、「相手の嫌がることをせずに尊重する」そうで。良くも悪くも「人たらし」なのかもしれませんな(つーか、原一男監督とか森達也監督とか想田和弘監督とか“優秀なドキュメンタリー作家”はそういう資質があるのでは)。松江哲明監督も「童貞をプロデュース。」の時にそういった配慮をしていれば、加賀賢三さんに舞台挨拶で襲撃されなかったのに…という余計な文章。

って、基本的に褒めていますけど、60点なんて普通な評価に落ち着いちゃったのは、ごめんなさい、上映時間163分が長かったから… (ノω・、) スミマセン 545分(9時間)「鉄西区」840分(14時間)「原油」よりはラクですが、「ナレーションや音楽を入れない手法→普通のドキュメンタリーよりも能動的に観なくてはならない」ため、やっぱり疲れちゃったのです… ('A`) 「荒々しくも繊細な魅力」とか「映画の魔術」といったことも、恥ずかしながらあまり感じ取れなくて(汗)、シネフィルへの道、果てしなく遠く感じた次第。


なんとなく「男坂」の雑なコラを貼っておきますね。



とは言え、実はワン・ビン監督と誕生日(11月17日)が一緒ということに今さら気付いて親近感が湧いたのでね、またチャレンジとして新作が公開されたら観に行く予定でございます。ちなみに、本作はドキュメンタリー→脚本なんてないのにヴェネチア映画祭で脚本賞を受賞するほど高評価なのでね、映画ファンを自認する方は体感しておくと良いんじゃないかしらん。最後に、なんとなく「もし僕が配給会社に本作のコメントを頼まれたら」という文章を書いて、この駄文を終えようと思います↓


長かったーー。
だが、少し頭が良くなった気がする。

カミヤマ ブロガー


おしまい ( ゚д゚) ナニコノオチ




ハードすぎるワン・ビン監督作。僕の感想はこんな感じ



パンフのコラムがタメになった山田泰司さんの著書。読もうかなぁ。









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