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だってしょうがないじゃない(ネタバレ)

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だってしょうがないじゃない

 

 

2019/日本 上映時間119分

監督・企画・撮影・編集・作画:坪田義史
プロデューサー:柏田洋平
制作プロデューサー・撮影:池田将
制作:平岩大知、バイロン・グールド
撮影・編集:和島香太郎
音響:今村左悶
編集協力:柏屋拓哉
音楽:宇波拓
アニメーション:つのだふむ 
作画:坪田達義
出演:大原信、坪田義史、木村真智子、木村義則、坪田達義、坪田洋子、坪田正子、関美晴、三澤直子、岩瀬一郎、大澤健二、寺島薫、長岡由生、柴田浩生、関根幹司

パンフレット:★★★★(800円/監督の取材メモ、森直人さんのコラム、傾聴ボランティアさんたちや主治医との対談など、映画の補完にイイ!)

(あらすじ)
精神に不調をきたし精神科を受診した坪田監督は、自身が発達障害のグループの1つである「ADHD(注意欠如多動性障害)」に適合するとの診断を受ける。親族に相談したところ、広汎性発達障害を持ちながら1人暮らしをする叔父・まことさんの存在を知らされ、カメラを持って会いに行く。母子家庭で育ったまことさんは、8年前に母を亡くしてからは、成年後見人となった叔母の支援のもと、障害基礎年金を受給しながら暮らしていた。坪田監督はまことさんと過ごす中で、まことさん特有の所作や思考に惹かれていくと同時に、「親を亡くした後の障害者の自立の困難さ」「知的障害者の自己決定・意思決定の尊重」などの難しい問題に直面する。(以上、映画.comより)


予告編はこんな感じ↓

 

 


95点


昨年の11月2日に公開された本作ですが、正直、全然興味がなかったんですけれども。愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」内番組「EXPOわっしょい」の中で、漫画家でコラムニストのしまおまほさん「ムービーウォッチウィメン」として本作を紹介されてまして。基本的に「ムービーウォッチメン」の課題映画はすべて観る主義”の僕ですよ(苦笑)、なんとなく本作も観ておこうと思ったものの、なかなか劇場に足を運べなかった…という、実によくあるパターン。で、本当は「仮設の映画館」で観ようと思っていたら、ああん、気が付いたら配信が終わってしまっていたので、6月27日(金)の上映最終日、コロナ禍が収まって営業を再開したあつぎのえいがかんkikiで鑑賞しました(その後、海老名に移動して「ランボー ラスト・ブラッド」をハシゴ)。「オレは娘よりも生きる!Σ(°д° ) クワッ!」と強く強く思ったり。

 
 

1番スクリーン、10人ぐらいいましたよ。

 

 

本作は、ADHD(注意欠如多動性障害)と診断された坪田義史監督が家族に話したら、広汎性発達障害を持つ自分の叔父(実際は「従兄弟違い」だそうな)のまことさんを紹介されて、接しているうちに「まことさんの見つめる世界観に触れてみたい」「見えづらい発達障害というものを浮かび上がらせたい」と思って撮影を始めたそうで。パンフで監督自身が「バディムービーとして作りたかった」と仰有っているように、「障害を持つ親戚を客観的に撮ったドキュメンタリー」というのではなく、「まことさんとよしふみさんの交流を描いた私小説的な作品」だった印象。監督も映りまくって取材対象に介入しまくる…というか、普通に仲良しなので、なんかね、全体的にはオジサン同士がキャッキャしているのを観てホッコリした…って、伝わるでしょうか。

 

 

左がよしふみさん(監督)で右がまことさんでございます。

 

 

未使用シーン↓ この2人の仲良し振りを観ているだけで癒されるのです… (´Д`;) ハァハァ

 

 

 

しまおまほさん「ムービーウォッチウィメン」の中で「他人事って世の中にはそんなになくて、それぞれの人に心を寄せるってことが大切なんじゃないかな」「離れたところにいたら問題児って思うかも知れないけど、映画を通じて身近に感じると見方が変わってくる」「独り言を言っているから怖い人…じゃない」といったことを仰有っていたんですが、本当にその通りというか(尻馬に乗った文章)。僕は“偏見まみれのクズ”なのでね、もし駅のホームとかで“まことさんのような人”を見かけたら、「危ない人がいるな… (`Δ´;)」みたいな感じで、そそくさとその場から離れるタイプなんですよ。でも、映画の中のまことさんは、変わったところは多々あるものの、善良であり、とても魅力的なオッサンでしてね。庭の桜の木を切り倒されてのションボリ顔とか、監督とのお風呂論争とか、撮影の池田さんを交えたバーベキューで焼きそばを食べるシーンとか、とにかく可愛い…とにかく可愛いのです!ヽ(`Д´)ノ ウォォォォッ! なんかね、監督と触れ合うことでイキイキしてくるまことさんを観ていると「“普通の人”と“精神障害者”の差はどこにあるの?」なんてことをあらためて考えさせられたし(ちょっと想田和弘監督の「精神」を思いだした)、「十分な根拠もなしに他人を悪く決めつけたらいけない」という、人として至極当たり前のことを今さらながら痛感させられましたよ…。

 

 

桜の木を切り倒されてションボリするまことさん。なんか泣けました。

 

 

つーか、本作は「温かさ」に溢れていて。監督とまことさんの距離が少しずつ縮まっていく雰囲気が素敵なのはもちろんのこと、親戚のマチ子おばさんは口うるさいながらもスゲー面倒見がいいし(エロ本が見つかって怒られた話は面白かった)、いろいろなボランティアの人たちがまことさんの暮らしを支えてくれているし…。すぐに「勝ち組だー」「負け組だー」とか言いがちな昨今ですけど、やはり「人間の豊かさ」とは他者を思いやって支え合えることにあって、そこに勝ち負けなんてないのではないか。パンフによると監督は「だってしょうがないじゃない」というタイトルを「諦めるのではなく、生まれもった障害を受容して、自分らしく次に進んでいく」という意味を込めてつけたそうですが、僕的には「他者を寛容な気持ちで受け入れる(だってしょうがないのだもの)」という意味も感じられて、とても素晴らしいと思った次第。

 

 

まことさんの暮らしを管理するマチ子さん。「お茶しようか」と言って、場面転換したら日本酒を飲んでて笑いました。

 

「傾聴ボランティア」って本作で初めて知りましたよ。僕もやってみようかなぁ。

 

 

あと、優秀なドキュメンタリーならではの「奇跡的な面白シーン」もしっかりあって、2ショット写真が心霊写真になったのは笑ったし、前出のお風呂論争は最高だったし、まことさんが意外とカラオケが上手かったのは驚いたし(そしてその後、得意げに!)、「吉高由里子と高橋みなみのどっちと付き合う?」「2人と付き合うという手もあるのでは?」という「お前は何様だ」感満載のボンクラトークも素晴らしかったですねぇ…(しみじみ)。その他、思ったことを書いておくと、「バリアフリー字幕が入ってる姿勢に感心」とか「坪田義史監督の声がTBSラジオの橋本吉史さんっぽい(よしふみつながり)」とか「一応、独りで暮らせているけど、大変そうだな…」とか「『カップ麺を食べている音』という字幕が入ったけど、まことさんが食べているのはぶっこみ飯では…という、どうでもいいツッコミ」とか「『仮面ライダーアマゾンズが観られますように』という七夕の願いに泣いた!」とか「その後、『早く幸せになれますように』という願いを追加したのも泣けた!」とか「まことさんはそもそもマチ子さんや監督といった親戚に恵まれているし、性格も悪くないし、もっと大変で面倒くさい人がたくさんいるんだよな…」とかとかとか。

 

 

この2ショット写真ですが…。

 

なんと「人の顔」らしきものが写ってたんですが、だからなんだと言われても返す言葉はありませぬ。

 

 

まことさんと監督がカラオケで歌っていた曲を貼っておきますね↓

 

 

 

で、僕が一番グッときたのは、まことさんのお母さんへの想い。40年間、ずっと2人で暮らしてきただけに、亡くなった時は相当な「お母さんロス」になったそうでね…(まことさんの「新しいお母さんがほしい」という言葉には泣きつつもスゲー複雑な気持ちになった)。中盤ぐらいに繰り広げられる「お風呂論争」、「夏場は毎日入るべき!m9`Д´) ビシッ」という監督の強めの主張に対して、まことさんが「でも、もう決まってることだから (・ε・)」を何度も繰り返して折れない場面は、笑いながらも「アンタ、何言ってんだ」感が強かったんですが、映画のラスト、入念に体を洗う入浴シーンを観て、「大事なんだな」と。これは「1回の入浴が入念すぎて大変」というだけでなく、「お母さんと決めたことだから譲らないんじゃないか」とも勝手に感じられて、スゲー泣けましたよ。まことさんの障害を周囲に伝えていなかったりと、母の辰子さんも思うところはいろいろあったんでしょうけど、2人には「確かな愛情」があったんだろうな…なんてね。

 

 

まことさんの入念な入浴は…。

 

お母さんの優しさへの解答だったのではないか…なんて勝手に思いがちな刃牙脳(「範馬刃牙」より)。

 

 

一応、オチを書いておくと、まことさんは「家を退去しなくちゃいけない問題」とかを抱えながらも少しずつ前に進んでいて、監督もまた彼の家に訪れる…って感じで終わってたんじゃないかしらん(最後は家を退去して終わるのかと思ったら、そうでもなかったぜ)。まぁ、何はともあれ、ベスト級の素晴らしい映画でした。僕ごときが何ができるってワケではないけど(汗)、まことさんのような人に対して偏見は持たないようにしようと思ったし、自分の娘(現在8歳)に決して寂しい思いをさせないよう、「オレは娘よりも生きる!Σ(°д° ) クワッ!」と強く思いましたよ。もうね、これからは健康を考えて睡眠時間を多めにして、ちゃんと筋トレもして、お酒を飲むのは週1回にします…なんて、心底どうでもいい誓いを書いて、この駄文を終えます (´∀`) ナニコノオチ

 

 
 
 

坪田義史監督作。これは劇映画なんですね。

 

 

しまおまほさんと杉作J太郎先生が出演しているという坪田義史監督作。

 

 
なんとなく思い出した想田和弘監督作。スゲー面白いです。
 
障害者プロレスを扱ったドキュメンタリー。僕の感想はこんな感じ。

 

 

 

しまおまほさん初の小説。買ったけど、まだ読んでないのです… (´∀`;) スミマセン

 

 

 

 

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