精神0
2020/日本、アメリカ 上映時間128分
監督・製作・撮影・編集:想田和弘
製作:柏木規与子
出演:山本昌知、山本芳子
パンフレット:★★★(700円/マーク・ノーネス監督による本作の分析とワン・ビン批判が面白かったです)
(解説)
様々な生きにくさを抱える人々が孤独を感じることなく地域で暮らす方法を長年にわたって模索し続けてきた山本医師が、82歳にして突然、引退することに。これまで彼を慕ってきた患者たちは、戸惑いを隠しきれない。一方、引退した山本を待っていたのは、妻・芳子さんと2人の新しい生活だった。精神医療に捧げた人生のその後を、深い慈しみと尊敬の念をもって描き出す。(以上、映画.comより)
予告編はこんな感じ↓
80点
想田和弘監督作については、「観察映画第2弾」の「精神」からすべて劇場に足を運んで観てたんですけれども。今年のコロナ渦…じゃなくてコロナ鍋…でもなくて(不要なボケ)、コロナ禍のせいで、ほとんどの映画館が休業状態になってしまったということで! 最新作の「精神0」は、5月2日から「仮説の映画館」で配信されていた…ってのは、愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」で知ったお話。で、僕もそりゃあ映画業界を応援したい気持ちはあるので、この「仮説の映画館」を利用しようと思ったんですが、しかし。想田和弘監督には悪いけど、正直なところ、ただでさえ自宅での映画鑑賞だと気が散りがちなタイプなのに、能動的に集中する必要がある「観察映画」の場合、間違いなく途中で挫折しそうだと思って、なかなか食指が伸びなかったのです (´・ω・`) ゴメンネ
で、やっとコロナ蝸…じゃなくてコロナ堝…でもなくて(不要なボケ)、コロナ禍が落ち着いた“ということ”になって、ほとんどの映画館が営業を再開したということで! 実家に帰った翌日の7月2日(木)、横浜・黄金町のシネマ・ジャック&ベティにて、溜まったポイントカードを使って無料で鑑賞いたしました(その後、センター北に移動して、「ムルゲ 王朝の怪物」と「ランボー ラスト・ブラッド」をハシゴ)。「大正解だぜ ( ̄ー ̄) ニヤッ」と思ったり。
当日のgif。観客は17人ぐらい。カメヤのパンは売ってなかったので、ソーダを買いました(“想田”監督の映画なだけにーー)。
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何が「大正解」だったのかって、
「劇場で観て良かった」ということ。ハッキリ言って、「アフター6ジャンクション」で聴いた話もすっかりうろ覚え状態だったので(汗)、僕的には
「『精神』の舞台になった精神科診療所『こらーる岡山』の閉院にまつわる話なんだろうな (・ε・)」程度の認識だったんですが、実際に観てみれば、山本昌知医師とその妻・芳子さんの
「夫婦の話」でしてね。「スクリーンに映し出されていること」自体は実に興味深かったりするものの、老夫婦ドキュメンタリー繋がりで
「人生フルーツ」あたりと比較すると、
スゲー地味というか。なんて言うんですかね、観察映画的には、観客がもどかしさを感じる“ゆったりした時間”も含めて「狙い」なんでしょうけど、ごめんなさい、僕がこれを自宅で観たら
即挫折してたと思います。
ただ、それは決して「つまらない」というワケではなくて、内容は示唆に富んでいた印象。映画の前半は、82歳で医者を引退することになった山本昌知さんと患者さんの対話が中心なんですが、後半は認知症になった妻・芳子さんとの暮らしが描かれましてね。基本的にはほのぼのしたムードの映像が続くんですけど、鑑賞中は「82歳まで医者を続けて、人を助けてきたことの尊さ(患者さんたちから慰労会が開かれたりする)」とか「とはいえ、それで犠牲にしてきたものもあったのではないか?(奥さんの人生も?)」とか「患者を助ける人生から妻を支える人生にシフトした…としても遅かったのでは?(と、昌知さんも少なからず後悔しているのでは?)」とかとかとか、一概に言えない思考の渦が巻き起こったというね。
昌知さんと芳子さんでございます。
つーか、僕が一番考えたのは「芳子さんは幸せだったのかな」ということ。終盤、2人でお墓参りに行って、昌知さんと芳子さんの“つないだ手”が映って映画は終わるんですけど、それって「昌知さん側の気持ち」でしかないような気もしたというか。中学からの知り合いだった2人の人生には「2人にしか分からぬ“夫婦の機微”」があるでしょうし、他人があーだこーだ言っても詮無きことでしょうけど、「当事者本位の精神医療」という素晴らしい仕事の陰には、間違いなく家庭という犠牲があって、そこに奥さんは納得できていたのかなと(勝手に患者を家に泊めた話とかスゴいと思った)。これは昌知さんを責めるワケではなく(芳子さんなりに充実していたのかもしれないし)、素晴らしい仕事を成し遂げるような人はワーカホリックだったりするだけに、家庭との両立は難しいのかな…なんてね。いや、もしかすると「今までの研鑽の日々は、認知症の芳子さんと暮らすためにあった」ということだったりもするのかしら…。ううむ、よく僕はこのブログで「いろいろと考えさせられましたぁ〜 (`∀´) ヘラヘラ」なんて文章を鼻をほじりながら書いてますけど(苦笑)、本当にスゲー考えさせられた次第。
最後はこのショットで終わってましたよ。
ちなみに想田和弘監督作ではお馴染みの猫要素もあって。可愛いサビ猫が登場してました (ΦωΦ) ニャー
まぁ、途中で
「元気だったころの芳子さん」の映像が挿入されると“現在とのギャップ”で超切なくなったものの(
「あの閃光のようだったジャブが… (ノω・、)」気分になる)、そういう手法をするなら「観察映画」じゃなくて、もっと伝わりやすいドキュメンタリーに仕上げても良かったのではないか…なんて思ったりもしたけれども、それはそれとして。率直に書くと、僕的には
「ザ・ビッグハウス」とか
「演劇1・2」とか
「選挙」とか、何よりも本作の前日譚となる
「精神」の方が分かりやすくて全然好みではあるんですが、今までの想田和弘監督作の中で
一番心に残った作品になったという不思議。本当に
劇場で観て大正解でしたよ。そんなワケで、万人にオススメはしませんけど(汗)、もしこの駄文を読んで興味を抱いた方は、ぜひ観てみてくださいな (・ε・) オシマイ
想田和弘監督作。「“普通”ってなんだろう」と考えさせられて、非常に面白かったです。
山本昌知先生と大田堯先生の対話集だとか。ちょっと気になります。
パンフで引き合いに出されていたワン・ビン監督作。僕の感想はこんな感じ。