原題:The Painted Bird
2019/チェコ、スロバキア、ウクライナ 上映時間169分
監督・脚本:バーツラフ・マルホウル
原作:イェジー・コシンスキ
撮影:ウラジミール・スムットニー
美術:ヤン・ブラサーク
衣装:ヘレナ・ロブナ
出演:ペトル・コラール、ウド・キア、レフ・ディブリク、イトゥカ・ツバンツァロバー、ステラン・スカルスガルド、ハーベイ・カイテル、ジュリアン・サンズ、バリー・ペッパー、アレクセイ・クラフチェンコ
パンフレット:★★★(700円/監督インタビュー、沼野充義教授と深緑野分先生のコラムで本作の補完ができます)
(あらすじ)
ホロコーストを逃れて疎開した少年は、預かり先である1人暮らしの叔母が病死して行き場を失い、たった1人で旅に出ることに。行く先々で彼を異物とみなす人間たちからひどい仕打ちを受けながらも、なんとか生き延びようと必死でもがき続けるが……。(以上、映画.comより)
予告編はこんな感じ↓
80点
「おやおや、砂風呂ですかな (´∀`) アラアラ」ってなビジュアルのポスターは気になったものの、とはいえ、なかなか内容がヘビーそうなムードがムンムン漂っていたので、あまり観る気は起きなくて。スルーしようかと思っていたんですが、愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」で今週の「ムービーウォッチメン」の課題映画になったので観に行くことにした…という、いつものパターン。10月19日(月)、TOHOシネマズ シャンテにて、auマンデイを利用して鑑賞いたしました。地獄でした… ('A`)
スクリーン1、ほぼ満席でしたよ(コロナ対応で座席は半分だけでしたが)。
記事の切り抜きがロビーにありました。
鑑賞後の僕の気持ちを代弁するSirを貼っておきますね(「グラップラー刃牙」第16巻より)。
本作は、説明的な台詞やモノローグが一切ないので(でも難しい映画というワケではない)、脳内で勝手かつ雑に補完したあらすじを書いておきますと。映画の舞台は第二次世界大戦中の東欧の“どこか”。主人公の“少年”(6歳ぐらい)は、疎開のために田舎に住む老婆マルタの家に預けられまして。近所の意地悪なガキどもに小動物(リス?)を焼き殺されたりしつつも、ピアノを弾いてみたり、アグレッシブなバイオリン人形で遊んだりと、それなりには楽しく暮らしていたんですけれども(マルタの章)。ある日、ボンヤリと死んでいたマルタを見て、思わずランタンを落としてしまうと、家がスムースに全焼。村人たちからは黒髪&黒い目などの見た目によって忌み嫌われているのか、「叔母殺し」を疑われたのか、リンチされるものの、呪い師の老婆オルガが引き取ってくれまして(オルガの章)。呪い師見習いとして働き始めるも、村人に脅されて川に流されてしまい、あてのない放浪生活へ、さぁ、出発だッ!ヽ(`Д´)ノ ウォォォォッ!
一緒に暮らしていた老婆が死んだことで、ありとあらゆる災難が少年を襲うのです。
その後は、粉屋ミレルの家では妻と使用人の浮気を疑ったミレルが猫の交尾に興奮した挙げ句に使用人の目をスプーンでくり抜いたのでその目を使用人に渡してみたり(ミレルの章)、鳥売りのレッフの家ではレッフの恋人ルドミラが性に奔放すぎて村の女性たちにリンチされて死亡したらレッフも首を吊るも苦しそうだったのでだいしゅきホールドによって自殺を幇助してあげたり(レッフとルドミラの章)、辿り着いた村でコサックの男に目を付けられると「ユダヤ人だ」とドイツ軍の駐屯地に送り届けられて射殺されそうになるも親切な老兵士ハンスが逃がしてくれたり(ハンスの章)、ナチスに捕まるも必死の靴磨きにより助かって司祭に引き取られて信者のガルボスの家で暮らし始めたら性的虐待野郎だったのでネズミだらけの穴蔵に落として殺害して教会のお世話になるもちょっとした失敗で肥溜めに落とされたり(司祭とガルボスの章)、雪原で死にそうになったところをラビーナという若い女性に助けられるも性的に求められた時に勃起しなかったせいで塩対応になったので悔しさのあまりヤギの首を切断して投げ込んでみたり(ラビーナの章)と、すったもんだがありました (´∀`) タイヘーン
肥溜めに落とされてからは声も失ってしまうというね…。
で、戦災孤児としてソ連軍の駐屯地で狙撃兵のミートカに親切にしてもらって「目には目を」教育を受けた後に拳銃をプレゼントされると(ミートカの章)、孤児院に引き取られましてね(ニコデムとヨスカの章)。市場でオモチャを見ていただけなのに「ユダヤ野郎!」と暴力を振るってきた奴を射殺したりと、荒れた暮らしを送っていたんですが、しかし。父親と名乗る男が迎えにきまして(母親も生きているっぽい)。「お前のせいで僕は酷い目に!(`Δ´)」と怒りモード全開の少年は夜の校舎窓ガラス壊して回ったりするものの、一緒にバスに揺られる父親の腕には収容所帰りを示す番号の入れ墨があったので、「両親も苦労したんダナー (´・ω・`)」と、なんとなくシンミリ。バスのガラス窓にすっかり忘れていた「ヨスカ」という自分の名前を書いてみたのでしたーー。
エンドクレジットで流れる歌は、ルドミラ役のイトゥカ・ツバンツァロバーの歌唱だとか (゚⊿゚) ヘー
169分と長めの本作は全9章のエピソードで構成されてましてね。「子どもが主人公で各章ごとに場面が変わる&主人公が異邦人(観察者)であり、ところどころ寓話っぽい」あたりは、確か著名人のコメントでも触れられてたし、検索すると引っ掛かる→多くの人が連想したとは思いますが(汗)、ダークな「世界名作劇場」といった印象。モロに思いだしたのは、少年が地獄の戦場巡りをする戦争映画の傑作「炎628」で、その主演だったアレクセイ・クラフチェンコを“主人公に親切なソ連兵”役で起用しているあたり、監督も意識はしているんでしょうなー。本作はイェジー・コシンスキの世界的に有名な小説「ペインティッド・バード」が原作だそうで(未読)。途中にある「鳥売りのレッフが1羽の鳥に白いペンキを塗って空に放つと、仲間の鳥たちからいじめられて殺されてしまう」という場面がタイトルの由来となっていて。要は「その見た目から勝手にユダヤ人と決めつけられていじめられまくる主人公の少年」(原作でも少年を「ユダヤ人」とする描写はないそうな)を表しているんですな…というパンフで得た知識 (´∀`) タメニナル-
一応、主人公の少年に対して親切に接してくれる人も出てくるんですが(例えば、序盤の呪い師オルガが少年を「吸血鬼」だなんだと言ったのは、村人たちから保護する意味合いもあったのでは)、全体的には酷いことの方が多め味濃いめ麺硬めであり、昔は実際にこんな感じだったんだろうなと。現在、僕には小学3年生の娘がいるのでね、状況をいろいろと当てはめて観ちゃって、座席で悶絶しまくりでしたよ… ('A`) ウヘェ 監督的には「暴力的な展開でもいたずらに露悪的な演出は避けた」そうなんですが…。とはいえ、「目がくり抜かれるシーン自体は映さないけど、くり抜かれた跡と目玉は映す」とか「女性を拘束して、女性器に瓶を入れて蹴る展開はあるけどモロには映さない」程度のバランスなので、途中で退場する人が続出したという逸話も非常に頷けました。ただ、モノクロの映像は叙情的で美しかったし(本作の寓話性も引き立たせているような)、ラストは「少年が自分の名前を取り戻して終わる」から、後味自体は意外と悪くないような気がしないでもないと思わなくもないと感じたりしなくもなかったです(煮え切らない文章)。
あと、あまり情報を入れてなかったので、大物が次々と登場したのはオトク感がありました。最初にウド・キアーが出てきたのは驚いたし…。
ステラン・スカルスガルドが全裸で走り回ってたのもビックリ…って、やだ、「マイティ・ソー ダーク・ワールド」が混ざっちゃった!(*ノ▽ノ) キャッ!
なんとなく出演者たちのインタビュー動画を貼っておきますね↓
それと、これもパンフを読んで知ったことですけど、「主人公を演じたペトル・コラールは監督がチェコの町でスカウトした素人」というのは驚いたし(そんなことあります?)、「原作の映像化権獲得に22カ月」「脚本は3年かけて17バージョン執筆」「資金調達に4年」「少年が自然に成長する様子を撮影するため2年費やす」「舞台となる国や地域を特定されないように、一部の台詞には人工言語『スラヴィック・エスペラント語』を採用」といった監督の本作にかける情熱やこだわりにはグッときましたねぇ…(しみじみ)。その他、思ったことを書いておくと、「呪い師オルガの立ちションにビックリ!」とか「呪い師の治療が怪しすぎて笑っちゃったものの、日本にも『うがい薬で、コロナに打ち勝てるのではないか』とか言い出した政治家がいたような…」とか「くり抜かれた目玉を渡されるのって絶対辛いよね」とか「善良な司祭(ハーベイ・カイテル)が意外と役立たずでガッカリ」とか「男性は、相手に性的魅力を感じていても緊張とかで勃起しないことが多々あるから、そういう時は優しくしてほしい」とか「今までは『年上の女性が少年に〜』というシーンは羨ましく感じていたけど、よく考えるとこれも性暴力なんだよな…」とか「村を襲撃して蹂躙したコサック兵たちがソ連軍にあっさり制圧されて吊される展開、無常さが感じられて好き」とか「ユダヤ人差別をする人たちを見て、やたらと在日認定する人たちを連想した」とかとかとか。
そういえば映画序盤の「病気の治療のために首まで埋められたら、カラスに襲われちゃったシーン」ですが…。
できれば、ガイアみたいに脱出してほしかった…って、どうでもいいですな(「グラップラー刃牙」第16巻より)。
何はともあれ、「少年の地獄巡り映画」としてスゲー面白いのは間違いないし、現代にも通じるところが多い普遍的なテーマを扱っているのでね、気になる人は劇場に足を運ぶと良いんじゃないかな…マジでキツいけど (´∀`;) オシマイ
イェジー・コシンスキが1965年に発表した原作小説。最後の展開が違うみたいですけど、読む気はしないかなぁ… (´∀`;)
バーツラフ・マルホウル監督作。チェコ義勇兵が主人公のハードな戦争映画っぽいですな。
少年が地獄を目撃するエレム・クリモフ監督作。これは観ておくと良いですぞ。