Quantcast
Channel: 三角絞めでつかまえて2
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2570

しわ(ネタバレ)

$
0
0

しわ

三角絞めでつかまえて-しわ

原題:ARRUGAS
2011/スペイン 上映時間89分
監督・脚本:イグナシオ・フェラーレス
原作・脚本:パコ・ロカ
脚本: アンヘル・デ・ラ・クルス、ロザンナ・チェッキーニ
音楽: ナニ・ガルシア
出演:ジェーン・レビ、シャイロー・フェルナンデス、ルー・テイラー・プッチ、ジェシカ・ルーカス、エリザベス・ブラックモア
パンフレット:★★★(800円/「イリュージョニスト」のパンフのようにバラバラになってるタイプ。読みにくくてあまり好きじゃないけど、飾ったりするのには超向いているので難しいところ)
(あらすじ)
養護老人ホームに預けられた元銀行員のエミリオ。お金に細かい同室のミゲルなど、施設に集まった老人は人それぞれ。完全に介護を要する老人は2階の部屋に入れられることもわかった。そんなある日、アルツハイマーのモデストの薬と自分の薬を間違えられたことから、エミリオは自身がアルツハイマーだと確信する。ショックを受けたエミリオのために、ミゲルは何とかしようと考えた結果……。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




93点


新宿バルト9で観て来ました。素晴らしかったです… ( ;∀;) イイアニメダナー


早めに観に行ってたら、なんと劇場来場者プレゼントがもらえた様子… (`Δ´;) オノレ
三角絞めでつかまえて-入場者特典


正直、すっかり舐めてました。ポスターの雰囲気が、以前に観てグッときた「イリュージョニスト」っぽいから「良質のアニメなのかな (・∀・) キニナルー」と興味を持っただけであって。なんて言うんですかね、てっきり「お前百まで、わしゃ九十九まで、共に白髪のはえるまで」ライクなお話かと。内容どころか予告編すらノーチェックだったので、「老いたけど人生は楽しいですな♪ヘ(゚∀゚*)ノ ワラライフ!」といった明るい人間賛歌的な内容かと思ってたんですよ。


なんとなくbuzzG氏による「しわ」を貼っておきますね↓




ところが! 映画を実際に観てみたら、予告編でも見られる“超イヤな感じのボケ描写”からスタートして。その後は全編に渡って、主人公エミリオ&施設で暮らす老人たちの“世知辛い余生事情”が描かれていくから、マジでゲンナリしまくりでしたよ…。特にエミリオのアルツハイマーが悪化するくだりは本当に予想外&ヘビー過ぎて、途中で帰りたくて仕方がなかったというか。もし自宅で観てたらDVDを何度も止めた気がします(まぁ、だから劇場で観て良かったんですがー)。


ポスターなどに使われている“微笑ましいメインビジュアル”をよく見てみたら…。
三角絞めでつかまえて-微笑ましいメインビジュアル

エミリオの思い出が頭から飛んでってる! 新手のスタンド使いの攻撃か!? Σ(゚д゚;) ヒィ!
三角絞めでつかまえて-頭から記憶が!


みなさん、自分が“老いる”って想像できますか? 僕は今年の11月で41歳になるんですが、体力の低下や肉体の回復の遅さとか、そういう実感はあれど、顔は昔から老けてるし、記憶力も前から悪いのでね(苦笑)、まだ“老い”というほどのことは我が身に降りかかっていないと思ってて。というか、むしろ今後何十年も筋トレを継続することで、将来的には劉海王級のマッチョボディを持つ老人になるぐらいの意気込みだったワケですよ。


刃牙でお馴染みの劉海王の画像を貼っておきますね。一応、100歳という設定でございます。
三角絞めでつかまえて-劉海王


ただ、そんなお花畑的な妄想は、この映画を観ているうちにすっかり吹き飛んだというかね…。過去と現実を混濁しながらドンドン理性を失っていくエミリオがマジでキツい。よくよく思い出せば、僕の祖父も父親も脳梗塞→アルツハイマーのコンボで死んでるので、「自分がこうなったら… (((゚Д゚;)))) ガクブル」と恐ろしくて仕方がなかったです。


無惨にボケていくエミリオ。「若いころの家族との記念撮影シーン」とか、激痛でしたな…。
三角絞めでつかまえて-ボケ老人エミリオ


その他にも「オウム返ししか出来ない元ラジオDJのラモン」とか「孫にプレゼントするためにバターやジャムを集めるアントニア」とか「家族に連絡を取ろうとして施設をさまようソル」とか「オリエント急行に乗ってる気分のロザリオ」とか、とにかく「こんな老後はイヤだ!m9・∀・) ビシッ」というお題に高確率で採用されそうなネタをワンサカ見せられるんですが、その描き方がまたスゲー上手くて…。ちょっと「ペコロスの母に会いに行く」を連想したというか、“現実と妄想が混濁する世界”の表現って漫画やアニメに向いているなぁと思ったり。


理性的に見えるアントニア(右)ですが…。必死な顔で孫にジャムやバターを渡すシーンの“痛さ”は、爪の間に畳針をねじ込まれたレベル。
三角絞めでつかまえて-アントニア


自分を「オリエント急行の乗客」だと思い込んでいるロザリオの動画を貼っておきますね↓




一番凶悪だと思ったのが、アルツハイマーが絶賛進行中のモデストと、その妻ドローレスのエピソード。もう症状が悪化しすぎて自分1人では何もできないモデストなんですが、ドローレスが「インチキね 川´,_ゝ`)」と囁くと微笑みましてね。そこから“2人が付き合うキッカケとなった「雲をつかまえる」エピソード”が描かれると、それが本当に美しくて…(しみじみ)。僕ったらすっかり「( ;∀;) イイハナシダナー」と泣きながら見ていたんですが、その直後にモデストの容態が悪化→2階(重症患者専用フロア)送りになっちゃうんだから、「この人でなし!ヽ(TДT)ノ」と監督をハードに憎悪。ハッキリ言って、ここら辺は地獄のようでした… ('A`) イヤーン


このドローレスとモデストのくだりにはスゲー泣きました。
三角絞めでつかまえて-ドローレスとモデスト


もうね、エミリオがボケちゃって、どう見ても救いのない状況になっていくから、僕的には「この映画、どうなるんだろ… (・ω・;) ウーン」と思っていたら! 気が付くと“もう1人の主人公”になっていたのが、ルームメイトのミゲル。登場時は、施設の他の住人を騙して金をかすめ取るクズ野郎であり、心の狭い僕は「このジジイは死ね!ヽ(`Д´)ノ キィィィ!」と激怒しまくりだったんですが、この人はこの人で人生に絶望するあまり、シニカルになっていたというか。己がボケた時のために自殺用の薬を用意しているほどの男だったんです。


エミリオのルームメイトのちゃっかり老人ミゲル。最初は利己的に見えたんですが…。
三角絞めでつかまえて-ちゃっかり老人ミゲル


でね、最初はエミリオなんて知ったことかって感じだったんですけれども、次第に友情が生まれまして(特にプールの場面が良い感じ)。楠瀬誠志郎さんを思わせる心意気で、エミリオの“2階”送りを何とか防ごうとするんですが…。調子に乗って老人3人でのドライブを試みたらアッサリ事故→症状が悪化してエミリオが2階で完全介護状態になってしまって。友人を失ったミゲルは「もうどうにでもなーれ♪ヘ(゚∀゚*)ノ」と自殺を試みると、薬を落とした拍子に、ベッドの下にエミリオが隠していた財布と時計を発見するというね…。


元気なころ、エミリオは「時計を盗んだろ!」とミゲルを責めていたワケですが、自分で隠したのを忘れてたんですな。
三角絞めでつかまえて-揉めていた2人


ミゲルったら、自殺を止めて、スゲー泣きまして。その後、金を巻き上げていた住人たちに様々なフォローをしてから、自らも“2階”に行って、ドローレスのように、アルツハイマーが悪化して何の反応もしなくなったエミリオの世話をするワケですが…。これは僕の勝手な妄想ですけど、ミゲルは「“エミリオと築いた思い出”には、これからも生きる価値がある」と気付いたんじゃないでしょうか。ハッキリ言って、老化なんてのは“勝ち目のない殿戦”なんですけど、それでも真正面から殴り合う価値が人生にはあるんじゃないかと。そんなのキレイごとなんですが、ちくしょう、僕は凄まじく胸を打たれたというか…。

ラスト、唐突に「ミゲルが気を遣って渡した伸びるリードのおかげで、犬好き老人のマルティンが愛犬ミルゥを失わずに済んで終わる」という場面が流れて終わるのも、「こんな世知辛い世の中だけど、少しの善意でより良く回るのかもしれない」という優しいメッセージだと思ってね。それまで地獄映画扱いでしたけど、最後の最後にすっかり「( ;∀;) イイエイガダナー」と号泣させられた次第。

つーか、つい辛気くさいことを多めに書いちゃいましたが、老人たちの描き方はユーモラス&チャーミングだったりもするし、決して悲惨一辺倒の作品ではなくて。振り返ってみれば、非常に良いバランスだったと思います。イグナシオ・フェラーレス監督は「イリュージョニスト」にもアニメーターとして参加してたそうですけど、これが初の長編だなんてスゴいとしか言いようがないですな。インタビューを読むと、非常に志が高かったりするし、宮崎駿監督&高畑勲監督のファンというのもうれしいし、これから応援したいと強く思いました。


ちなみに僕が最も萌えた老人は、妄想の火星人に怯えるカルミーニャ。ミゲルからもらった武器で退治する際の“悪そうな顔”は必見!
三角絞めでつかまえて-火星人に怯えるカルミーニャ


イグナシオ・フェラーレス監督の短編「How to Cope with Death(死に対処する方法)」↓ この監督、老人が好きなのかな…。




そんなワケで、恐ろしくゲッソリしましたけど、非常に良く出来た素晴らしい映画でしたよ。精神的にキツいところが多かったので、もう一度観る気はまったくないんですが、思わずamazonで原作漫画を注文しちゃったりしてね (ノ∀`) エヘヘ 現在、上映館&上映時間はかなり限られてるみたいですけど、海外のアニメに抵抗がない人なら要チェックですぞ。




パコ・ロカによる原作漫画。早速、買っちゃいました。
三角絞めでつかまえて-皺 原作漫画
皺 (ShoPro Books)


イグナシオ・フェラーレス監督がアニメーターとして参加している作品。僕の感想はこんな感じ
三角絞めでつかまえて-イリュージョニスト [Blu-ray]
イリュージョニスト [Blu-ray]


放送作家の古川耕さんが予言した通り、読んだら涙で眼球が爆裂した漫画(少しウソ)。
三角絞めでつかまえて-ペコロスの母に会いに行く
ペコロスの母に会いに行く


「ボケ老人」と聞くと思い出すサラ・ポーリー監督作。「奧さんがボケて旦那を忘れる」という設定がイヤすぎて未見だったり。
三角絞めでつかまえて-アウェイ・フロム・ハー
アウェイ・フロム・ハー 君を想う <デラックス版> [DVD]


つい「マックス、モン・アムール」と間違えがちですが(不要な文章)、全然違う“鬱映画”なので気をつけて!
三角絞めでつかまえて-愛、アムール
愛、アムール [DVD]





Viewing all articles
Browse latest Browse all 2570

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>