原題:Swallow
2019/アメリカ、フランス 上映時間95分
監督・脚本:カーロ・ミラベラ=デイビス
製作:モリー・アッシャー、ミネット・ルーイー
製作総指揮:ジョー・ライト、ヘイリー・ベネット、サム・ビスビー、コンスタンティン・ブリースト、ピエール・マザルス、エリック・タビティアン
撮影:ケイトリン・アリスメンディ
美術:エリン・マッギル
衣装:リエーネ・ドブラヤ
編集:ジョー・マーフィ
音楽:ネイサン・ハルパーン
音楽監修:ジョー・ラッジ
出演:ヘイリー・ベネット、オースティン・ストウェル、エリザベス・マーベル、デビッド・ラッシュ、デニス・オヘア
パンフレット:なし
(あらすじ)
ニューヨーク郊外の邸宅で、誰もがうらやむような暮らしを手に入れたハンター(ヘイリー・ベネット)。しかし、まともに話を聞いてくれない夫や、彼女を蔑ろにする義父母の存在など、彼女を取り巻く日常は孤独で息苦しいものだった。そんな中、ハンターの妊娠が発覚し、夫と義父母は待望の第一子に歓喜の声をあげるが、ハンターの孤独はこれまで以上に深くなっていった。ある日、ふとしたことからガラス玉を飲み込みたいという衝動にかられたハンターは、ガラス玉を口に入れて飲み込んでしまう。そこでハンターが痛みとともに感じたのは、得も言われぬ充足感と快楽だった。異物を飲み込むことに多幸感を抱くようになったハンターは、さらなる危険なものを飲み込みたい欲望にかられていく。(以上、映画.comより)
予告編はこんな感じ↓
75点
※本作については、尊敬する映画評論家の町山智浩さんの「たまむすびでの紹介」とか、山本匠晃アナのレビューなどをチェックするとよござんす。
※今回の記事は、非常に心の狭い文章が書かれているので、気をつけて!
「ジョン・ウォーターズのベスト2位」とか「町山さんの今年ベストに入る」とか前評判が高かったため、一応、「観たい映画の覚え書き」では「○」を付けたものの、ごめんなさい、本作で扱っているという「異食症」に1ミリも興味がないので、あまり観る気はナッシングだったんですけれども。愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」で「フード(イート)ウォッチメン」として山本タカキアナが紹介されていた&今週の「ムービーウォッチメン」の課題映画になりましてね。1月21日(木)、恵比寿で「ニューヨーク 親切なロシア料理店」を観てから、「付き合いだしな (゚⊿゚) シカタネーナ」と、渋谷のシネクイントでハシゴ鑑賞してきました。「良かったね (´∀`) ガンバッテ!」と思ったり。
スタンプカードが4つ溜まったので、無料で観ました。
スクリーン1、お客さんは25人ぐらいはいたような。
パンフは売ってなかったけど、Tシャツが販売中でしたよ。
最初にあらすじを雑に書いておきますと。大企業の御曹司リッチーと結婚した主婦ハンターったら、悠々自適の玉の輿ライフを送りつつ、無事妊娠して良かったね…なんて思いきや。夫やその両親からは「優しくも見下されている」ムード&「所有物扱い」感がムンムンであり、ディナーの時に話をしても遮られる有り様だったので、コップの中にあった氷を食べてみたら、意外とイイ!川*゚∀゚)=3 ムッハー さらに義母からもらった自己啓発本に「ビックリするような新しいことに挑戦してみよう!」的なことが書いてあったので、なんとなくビー玉を飲み込んでみたら、意外とイイ… (´Д`;し ハァハァ すっかりハマッてしまって、口紅やら何やらと飲み込んでは排泄して、トロフィーとして並べるエブリデイだったんですが、しかし。産婦人科で超音波検査をしたところ、赤子とともに異物が見つかってしまうのです。
そして、“次世代ヴァン・ダム”と呼ばれたスコット・アドキンス似の旦那から罵られるというね。
「異食症」と診断されたハンターは、精神科の診察を受けつつ、シリア出身のお手伝いルアイの監視下で暮らし始めるも、夫がまったく自分を尊重してくれないので、トイレに隠した異物を飲み込む有り様ですよ。つーか、実は彼女は「レイプされてできた子ども」という出自があり(母親が中絶を禁止するキリスト教右派だったため)、ずっと「自分には価値がないんじゃないか?」という心の痛みを抱えながら生きていたっぽくて。夫や義父母にも見下されるストレスによって異食症が発動したっぽい中、そのことを味方だと思っていた精神科医に告白してみれば、なんと夫にすべてを報告していたから「あんまりだぁぁぁっ!川TДT) ウワァァァン!」とドライバーを飲み込んで瀕死状態に。手術後、施設に入れられそうになるも、情にほだされたルアイの助けを借りて逃走すると、電話で話した夫に「クソ女」扱いされてから、母をレイプした男(a.k.a.実の父親)の家を訪れましてね。「君は悪くないよ (´∀`)」と慰められて吹っ切れたハンターは、お腹の子の堕胎を決意。トイレで異物を全部出すと、超スッキりすなのでしたーー 川°∀°)b スッキリ!
“理想の夫”はクソ野郎だったので、携帯を破壊して縁を切ってましたよ。
ちなみに「ハンター」と聞くと高確率で思い出す昭和のCMを貼っておきますね↓
中高6年間も英語を学んだにもかかわらず、驚くほど英語力が低い僕ですよ(汗)、恥ずかしながらこの映画のおかげで「Swallow」という単語が「飲み込む」という意味なのを知ったんですけれども。まぁ、文字通りに「異食症」を指すだけでなく、今まで自己主張控えめだった彼女が「不満を飲み込んできた」ってことも意味するのかなと。それって「レイプされて生まれた子」という出自故に負い目を感じて(終盤、母親に邪険にされてたっぽいことがわかる電話シーンあり)、「愛されていない」「愛されたい」と思って生きてきた彼女の「愛されるための処世術」でもあったんですよね、たぶん。これって大なり小なり、誰でもやっていることなんじゃないかなぁと。
あと、実際の「異食症」がどういうものなのかはよく知りませんが、本作の彼女の「異食」は、自己啓発本からの「こんなことって、私にしかできないでしょ?川o^-')b ドウ?」的な「無駄なイキリ」感も感じたというか。「自分が特別だと思いたい」という気持ちの発露もまた、誰だって持っているワケですが、僕もそういうのが強いタイプなのでね(苦笑)、鑑賞中はハンターにかなり感情移入して観ちゃいましたよ。最後の堕胎オチに関しては賛否あるみたいですけど、僕的には「ハンターが自分の人生を獲得したハッピーエンド」という解釈をしております(ただ、あの段階から薬で堕胎できるのはビックリしました)。つーか、主演のヘイリー・ベネット、繊細な演技が本当に素晴らしくて、本作でいろいろな賞を受賞したのもうなずけるし、これから主演作が増えるんじゃないかしらん。もうね、あの「夫に馬乗りでチュッチュするシーン」とか超可愛くて、とても…羨ましかったです… ('A`) ウラヤマシイ...
ヘイリー・ベネット、今まであまり気にしてなかったけど、本作で一気に好きになりました。
彼女が夫とイチャイチャするシーンは、すっかり泉宗一郎先生気分だったり(「餓狼伝」第11巻より)。
演出も褒めるしかなくて。「異物を飲み込むくだり」の詳細については、山本タカキアナの見事な分析を読んでいただければと思うんですが、単に飲み込む難易度が上がっていくだけでなく、トロフィーとして観客に見せてくれるのが親切だし(「えっ、こんな大きいのも飲んだの?Σ(゚д゚;)」という驚きがあって最高)、本を読みながらムシャムシャ食べたり、スパイモノのように隠しておいた異物を飲んだりとか、バラエティ豊かで面白いのです。あと「異物を飲む」だけでなく、ちゃんと排泄まで描くあたりも好きでして。というのは、僕は以前、「週に1度だけ1日1万kcal摂取する」という試みを実施していた時期があったんですが…。食べるのは良かったんですけど、排泄量が増加→アナルに甚大なダメージを負ったので、排泄理由は違うものの、あの血便は決して他人事とは思えなかった…って、スゲーどうでも良い文章を書きました (ノω・、) スミマセン
こういうシーン、良いですよね。少し「私が生きる肌」の“ある場面”を連想しました(アダルト注意)。
人物描写も繊細で、決してストレートではないものの、真綿で首を絞めるかのように、ジワジワとハンターにストレスを与えていく展開の数々は「こういうのって、あるある!(´Д`;)」って感じでしたよ。夫や義父母の「悪気はなさそうだけど、彼女の意思を1ミリも尊重してない」感が良かったのはもちろんのこと(夫も義父もすぐ「オレの金でー」とか言う)、僕的には「『ハグして』と言ってきた男が他の人にも言ってた→自分はやっぱり『特別』じゃない」と思い知らされるくだりとか、地味にキツかったです(ただ、「僕も彼らのような態度を誰かにとっている可能性もあるよな」とも思わされた地獄!)。その他、直前に観た「ニューヨーク 親切なロシア料理店」にも「あまり働いたことのない奥さん(で、夫と別れようとする)」が出てきたのもあって、人間、何かあった時の生活力はつけといた方がいいよなぁとあらためて思ったり(なんとなく「グッド・ワイフ」も連想)。そりゃあ、奥さんが専業主婦でうまくいっている家庭もたくさんありますが、事故や病気で…ってこともありますしね。
旦那&義父母はいけ好かない奴らでしたが、僕にもこういう部分がなくはないような気がしないでもない。
エンドクレジット、女性たちが次々とトイレに入っていくシーンを固定して延々と映し出していて、何らかのメタファーなんでしょうけど、僕的には前にラジオでしまおまほさんか誰かが言ってた「髪の長い女性は濡れた手を髪で拭く」というのが観られて、「これか!Σ(゚д゚ ) クワッ!」と思った…ってのはどうでも良いとして。これが初の劇場用長編っぽいカーロ・ミラベラ=デイビス監督、非常に才能がある方ではないでしょうか。正直、いくら「刑務所でリンチされた末に人工肛門になって改心した」にせよ、レイプ野郎は永遠に苦しんでほしいので75点という評価になりましたが(信用できない採点基準)、気になる方はぜひ劇場で観てみてくださいな。おしまい。
デジタル盤のサントラ。アナログ盤もあります。
僕が観てたヘイリー・ベネット出演作。エステル役の人だったのね。感想はこんな感じ。
タイトル繋がりで連想したものの、全然関係ない映画を貼っておきますね。