2021/アメリカ、フランス、カナダ 上映時間112分
監督・脚本:シアン・ヘダー
製作:フィリップ・ルスレ、ファブリス・ジャンフェルミ、パトリック・ワックスバーガー、ジェローム・セドゥー
オリジナル脚本:ビクトリア・ベドス、スタニスラス・カレ・ド・マルベルグ、エリック・ラルティゴ、トーマス・ビデガン
撮影:パウラ・ウイドブロ
美術:ダイアン・リーダーマン
衣装:ブレンダ・アバンダンドロ
編集:ジェロード・ブリッソン
音楽:マリウス・デ・ブリーズ
音楽プロデューサー:ニック・バクスター
音楽監修:アレクサンドラ・パットサバス
出演:エミリア・ジョーンズ、トロイ・コッツァー、マーリー・マトリン、ダニエル・デュラント、フェルディア・ウォルシュ=ピーロ、エウヘニオ・デルベス、エイミー・フォーサイス
パンフレット:★★★★★(880円/コラムがとても良かったし、楽譜を模したデザインもイイ。東宝ステラ、良い仕事ッ!)
(あらすじ)
海の町でやさしい両親と兄と暮らす高校生のルビー。彼女は家族の中で1人だけ耳が聞こえる。幼い頃から家族の耳となったルビーは家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。新学期、合唱クラブに入部したルビーの歌の才能に気づいた顧問の先生は、都会の名門音楽大学の受験を強く勧めるが、 ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられずにいた。家業の方が大事だと大反対する両親に、ルビーは自分の夢よりも家族の助けを続けることを決意するが……。(以上、映画.comより)
予告編はこんな感じ↓
80点
※映画とは関係ないんですが、本作を観た後に検索して見つけた「奄美の海でカツオ一本釣り」という記事が面白かったので、読んでみて!
ごめんなさい、全然興味がなかったんですけど、愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」の週刊映画時評コーナー「ムービーウォッチメン」の課題映画になったので観ることにした…というお馴染みのパターンでしてね(苦笑)。2月1日、渋谷で「スティルウォーター」と「さがす」をハシゴしてから新宿に移動して、新宿ピカデリーにてファーストデイ割引を利用しつつコーヒーを飲みながら鑑賞いたしました。スゲー泣きましたヨ… (iДi) ウェェェェェ
2月1日のgif。12番スクリーン、満席でした。
鑑賞中の僕はクライベイビー・サクラのようだったり(「餓狼伝」第8巻より)。
タイトルの「Coda(コーダ)」とは「Children of Deaf Adults」の略で「⽿の聴こえない両親に育てられた(聞こえる)⼦ども」という意味だとか。僕は2017年に「きらめく拍手の音」という韓国のドキュメンタリーを観て初めて知った用語なんですが、本作の主人公ルビーがこのコーダでしてね。歌が大好きで先生に才能も認められているので大学に進学したいものの、ろう者の家族の仕事(漁師)を通訳として手伝わなくてはならない状況に直面して、「自分の夢」と「大切な家族」の間で思い悩むというのが基本的なストーリー。まぁ、身もフタもなくラストを書いておくと、学校のコンサートに行って、観客の反応を見ることで娘の才能を知った両親は大学進学を許可→ルビーはオーディションで見事に合格して、大学の寮に引っ越すところで終わってましたよ。
去り際にルビーが家族に向けるこのサインはグワシではなく「私は本当にあなたを愛してます」という意味だそうな ( ;∀;) イイサインダナー
なんて言うんですかね、劇中で起こる展開に意外性はゼロなんですよ。ある程度、映画やら小説やらドラマやらマンガやらでフィクションに触れてきた人なら「大体、こうなるだろうな (・∀・) ニヤニヤ」と思うことが次々と繰り広げられる感じではあるんです。ただ、役者さんの演技とか音楽とか演出とか諸々が優れていて、その素晴らしさに驚かされて感動させられるから映画ってのはスゴいなぁと(小並感)。コメディ色が強いのも良くて(キツめの下ネタは苦手でしたが)、特にエウヘニオ・デルベス演じる音楽教師Vの(良い意味で)面倒くさい感じはツボに入りましたね〜。「聴覚障害を持つ役者さんを起用する」というだけでなく、手話演技監督を迎え入れてリアリティを高めたという姿勢も偉いとしか言いようがないし…。笑って泣けて感動できて、本当に良く出来た映画じゃないでしょうか。
V先生、遅刻の原因をちゃんと聞いてやれよとは思ったけど、オーディションでのサポートぶりが愉快だったから許す (・ε・) エラソウ
僕が本作で感動したのは、音楽シーンの見せ方。映画終盤、合唱部のコンサートのシーンで、普通に上手な歌が流れまくるものの、両親や兄は耳が聞こえないから、途中から結構どうでも良さげになるんですけれども。ふと音が消える=ろう者の世界の中で、彼らが周囲の観客の表情を観察することで娘の歌の才能を確認するシーンがね、「豊か」なんです。昨年観た「サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~」でも見事に描かれていたんですが、「音を失った世界」なのではなく「静寂に満たされた世界」にいるというか。健聴者は「耳が聞こえないなんて可哀相に…」とか勝手に思いがちだけど、「いや、そんなことないのか!Σ(゚д゚)」とあらためて気付かされた…って、伝わりますかね。
お父さんが観客を観察する場面、「ろう者の世界」について、考えさせられましたよ。
その後の「お父さんが娘の喉に手を当てて歌を振動で感じ取ろうとする場面」がスゲー泣けたのはもちろんのこと、クライマックスのオーディションシーンは最高のひと言。これ、パンフでも書かれていましたが、ルビーが歌いながら手話を始めるのは「観ている家族に歌を伝えたい」という以上に、あれこそがコーダとして生きてきた“自分の表現”なんですよね…。エミリア・ジョーンズの歌唱力もあって、僕的にここ最近では一番グッときた歌唱シーンだったし、目がもげそうになるほど泣いた次第。なお、エミリア・ジョーンズについては、パンフを読んでみたら、“スゲー面白かったけど虐待描写がハードすぎて二度と観たくない映画”「ゴーストランドの惨劇」の主演の子だったので、超ビックリした…ということも書き残しておきましょう(知った風な口で)。
エミリア・ジョーンズの歌唱動画を貼っておきますね↓ 100点ッ!
正直なところ、すみません、僕は「子どもの意に反して家業を手伝わせる親」が大嫌いなので、その部分は乗れなかったんですが(本作の兄のように怒りながら観てた)、とはいえ、「アタシ、大学行きたい!ヘ(゚∀゚*し」「よし、行ってこい!m9`Д´) ビシッ」なんてスムースな話だと盛り上がりに欠けるので仕方なし。何はともあれ、とても良い映画でしたヨ (´∀`) ヨカッタワー シアン・ヘダー監督の前作「タルーラ 彼女たちの事情」も少し観たくなりました。あと、最後に書いておくと、本作はパンフも非常に良い出来でして。カメラマンの齋藤陽道さんによる「ろう者の親の視点」のレビュー、そしてライターの五十嵐大さんの「コーダの視点」のレビューがこれまた泣けるほどに素晴らしかったので(なお、デザインは大島依提亜さんッ!)、本作が好きな買ってみて!
映画を観ると高確率でほしくなるデジタル盤のサントラ。CD版もあります。
元になったフランス映画。興味はあるけど、観る時間がないザンス。
エミリア・ジョーンズが超悲惨な目に遭うホラー映画。僕の感想はこんな感じだけど、虐待描写がハードなので気をつけて!
お母さん役のマーリー・マトリンが史上最年少の21歳でアカデミー主演女優賞を受賞した作品だとか (゚⊿゚) ヘー
突然、聴覚を失った男を描いた作品。はちごろうさんに勧められて昨年観ましたが、スゲー良かったです。
手話が重要な役割を果たすジャン=クロード・ヴァン・ダム主演作を貼っておきますね。