悪いやつら
英題:NAMELESS GANGSTER:RULES OF TIME
2012/韓国 上映時間133分
監督・脚本:ユン・ジョンビン
制作:パク・シンキュ、ユ・ジョンフン
撮影:ゴ・ナクソン
照明:イ・スンウォン
美術:チョ・ファソン
編集:キム・サンボム、キム・ジェボム
音楽:チョ・ヨンウク
録音:ジョン・クン
音響:キム・ソクウォン、キム・チャンソプ
衣装:クォン・ユジン、イム・スンヒ
メイクアップ:キム・ヒョンジョン
特殊効果:チョン・ドアン
出演:チェ・ミンシク、ハ・ジョンウ、チョ・ジヌン、マ・ドンソク、クァク・ドウォン、キム・ソンギュン、キム・ヘウン、クォン・テウォン、キム・ウンス、中島武
パンフレット:★★★★(600円/値段の割に情報が多め)
(あらすじ)
1982年、釜山の税関で検査課主任として勤務するイクヒョン(チェ・ミンシク)は、夜の巡回中に大量の覚せい剤を見つける。密輸や賄賂が当たり前の税関内で、これまで彼も当然のように不正に手を染めながら家族を養ってきた。イクヒョンは覚せい剤の日本への密輸を思い付き、釜山の裏社会を取り仕切るヒョンベ(ハ・ジョンウ)に取り引きを持ち掛ける。(以上、シネマトゥデイより)
予告編はこんな感じ↓
80点
あの名優チェ・ミンシクと、今をときめくハ・ジョンウの共演で、タイトルが「悪いやつら」ということで、「さぞ悪い奴ら揃いなのだろう (`∀´) フハハハハハ」と超期待してまして。メンズデーを利用して、シネマート新宿で観てきました。「確かに悪い!Σ(゚д゚;) イヤーン」と思いましたよ。
ロビーにはパネルやら記事の切り抜きやら。
コアチョコのTシャツ&うちわ&前売り券セットは超欲しかったんだけど、XXLサイズがなかったから… (´・ω・`)
DVDなどの関連グッズも多数ありましたよ。
サイン入りポスターも飾られてましてね。
サイン入りプレス&うちわがもらえるキャンペーンもやってました。
最初はもっと、さまざまな登場人物が登場しては「誰が誰を裏切るのか!? (;`∀´) フフフ...」的な展開が、ハードなバイオレンス描写とともに繰り広げられる「アウトレイジ」みたいな作品かと思ってたんですが、しかし! 実際に観てみたら、1980~90年代の韓国を舞台に、“普通の汚職公務員”だったイクヒョンが“パンダル(「カタギじゃないけど、ヤクザでもないハンパ者」のこと)”としてヤクザ社会でのし上がっていく様子を描いた作品でして。ヤクザ&マフィア映画をよく観る人なら高確率で連想しそうですけど、僕的にも“「仁義なき戦い」
の泥臭さで味付けした「グッドフェローズ」
”という印象でしたね~。
このコッテリしたビジュアルのオッサンが主人公でございます。
もうね、チェ・ミンシクの演技は100点でした。先日、やっとリュ・スンワン監督の「クライング・フィスト 泣拳」を観て迸るほど感動したんですが、あの主人公とは180度違う“世渡り上手で卑劣な親父”を嬉々と演じてまして。序盤、悪徳公務員としてジャンパーをはだけて袖の下をスムースに受け取るシーンから最高で、イクヒョンが口八丁手八丁で裏社会でサバイブしていく姿は、「こ、コイツは… (゚д゚;)」と軽蔑して呆れながらも愉快というか。その行動があまりにも身も蓋もなさすぎるからなのか、不思議と憎めなくて面白いんです。あの“偉い親戚の連絡先が書いてある電話帳”を駆使する場面とか、なんとなく“「サマーウォーズ」
のおばあちゃん”を思い出したり(精神性は真逆ですがー)。
調子に乗りすぎてリンチされると、超気弱なのもスゲー人間臭くて良い感じ。
浮気とかもするけど、基本的に家族“だけ”は大事にする姿勢が、なんか嫌いになれないんですよね。
で、そんなイクヒョンと結束することになるヤクザの組長ヒョンベを演じたハ・ジョンウの匂い立つ色気といったら! (*゚∀゚)=3ムッハー 一見、冷酷に見えつつも、“熱い心”を持っていて、それ故に最終的にはイクヒョンに騙されて捕まってしまうんですけど、とにかくカッコ良くてね…(しみじみ)。あらためてハ・ジョンウは良い役者さんだと感心いたしました。
ヒョンベが逮捕を免れて感謝する場面はグッとくるんですが、「この人、騙されそうだな…」と不安もよぎって、その通りになるのでした (ノ∀`) ザンネーン!
それ以外の登場人物たちも“金のことしか頭にないゲス野郎”ばかりなんですけど、ちゃんと人間臭さが漂っているからどことなく憎めなくて。例えば、イクヒョンの義弟キム(マ・ドンソク)とか、ヤクザの不正を質すのかと思ったらしっかり袖の下を要求する精神性の低さとか、武道家というバックボーンがまったく役に立たなかったりするのが愉快だったりしてね。ライバルヤクザのパンホ(チョ・ジヌン)と女社長のチョン(キム・ヘウン)の日和見な感じも良かったですな~。あと、ユン・ジョンビン監督は“80年代の味を出せるルックス”にもこだわったようですが、僕的にヒョンベの右腕チャンウ役(キム・ソンギュン)はその見た目だけで「合格!(o^-')b」って感じでしたよ。
左にいるのがチャンウ。「宮史郎の髪型」(by 杉作J太郎先生)なんですけど、これはこれでカッコ良かったりする不思議。
って、役者ばかり褒めてますが、お話自体も非常に興味深いのです。韓国が「血縁云々にうるさくて、汚職がはびこっている」というのは知ってたつもりだし、近作では「トガニ 幼き瞳の告発」の“前官礼遇”に激怒させられたりもしてましたけど、まさかこれほどだったとは!(;`Δ´) ヌゥ! 「“血”が“法”を曲げる」なんて一部の人たちにオトクなだけ→無関係な一般人は「ふざけんな ( ゚д゚) シネヨ」としか思えないのが当たり前であり、劇中では、ホムソク検事(クァク・ドウォン)が取り込まれないように必死に抗ってましたが、そこを利用するメリットが多くの人にある以上、ああいうシステムをなくすのは大変なんでしょうな…(映画は80年代の話ですが、パンフレットによると今もまだ根強く残っているとか)。
ホムソク検事、頑張ってましたな! 最終的にはこの人も多少の折り合いをつけるワケですがー。
なんて言うんですかね、僕の叔父は土建屋で、モロに“暴力的なイクヒョンみたいな人”だったので大嫌い&心底軽蔑してたんですけど、“40歳になって2歳の娘がいる今の自分”の立場からすれば、困窮したらスムースに“そのシステム”に乗っちゃう気もするのですよ…。そう思うと、あのイクヒョンの“媚びへつらい”は目的達成のためにはなりふり構わない潔さでもあるというか、「みっともない」と思いつつ清々しくも感じたりするというか。ううむ、いろいろと考えさせられた次第 (´・ω・`)
まぁ、「シグルイ」の虎眼先生ですら上役には媚びざるを得ないのだから、凡人は媚びまくるしかないんでしょうな。
「映画的にもイイ!ヘ(゚∀゚*)ノ」というか、ところどころ映像がスタイリッシュだったりしながらも、あえてダサく見せているところもあって。暴力描写もそれなりにえげつなくて良かったし(ビンで殴るシーンはどれも良し)、80年代の韓国の音楽も素敵だったし、作品へのこだわりがちゃんと伝わってくるのは好感が持てました。ユン・ジョンビン監督、非常に才能がある人じゃないでしょうか。今までの監督作にはすべてハ・ジョンウが出ているというのもあって、ちょっとチェックしようと思いました。
主題曲「風の便りで聞いたよ」を貼っておきますね↓ サントラ、スゲー良さそう。
ちなみに最後の展開を書いておくと、イクヒョンの裏切りもあって、彼以外の悪党はほとんど逮捕されまして。その20年後、イクヒョンは1人息子が検事になって、幸せな老後を迎えたかと思いきや! 「孫の誕生パーティでご満悦なイクヒョンに何者かが近づいていく→『大叔父』という裏切られたヒョンベの声がする」という超不穏なムードで終わるんですが…。正直、「それでもイクヒョンなら…イクヒョンならきっと何とかしてくれる!! (゚∀゚;)」と思ったのは僕だけでしょうか(つーか、ヒョンベが赦しちゃいそう)。
一応、「スラムダンク」の「それでも仙道なら」のシーンを貼っておきますね。
ということで、ダラダラと駄文を垂れ流してきましたが、スゲー面白かったです (´∀`) ヨカッタ 「悪いやつら」という邦題もなかなか良かったんじゃないかしらん。思ってた以上に凄惨じゃないし、笑っちゃうシーンも結構あるので、韓国映画が好きな人ならとりあえずは観ておくと良いですぞ。
ユン・ジョンビン監督作。卒業制作なのに、映画祭などで絶賛されたそうな。観たい!ヽ(`Д´)ノ
許されざるもの [DVD]
ユン・ジョンビン監督の2作目。ホストの世界を描いたそうな。観たい!ヽ(`Д´)ノ
ビースティ・ボーイズ [DVD]
サントラ。映画を観た人なら高確率でほしくなりそうというか、超ほしい!ヽ(´Д`;)ノ アアン
犯罪との戦争:悪い奴ら全盛時代 韓国映画OST (韓国盤)
ユン・ジョンビン監督が100回観るほど愛してるマーティン・スコセッシ監督作。スゲー面白いのです。
グッドフェローズ [Blu-ray]
深作欣二監督によるヤクザ映画の名シリーズ。ほしいけど手が出ない…。
<初回生産限定>仁義なき戦い Blu‐ray BOX [Blu-ray]
北野武監督によるバイオレンスヤクザ映画。それなりに好きです。
アウトレイジ [Blu-ray]
リュ・スンワン監督による傑作。この映画が僕にとっての“ベスト・ミンシク”でございます。
クライング・フィスト 泣拳 デラックス・コレクターズ・エディション [DVD]
「わるいやつら」と聞いて、最初に思い浮かべたのがこの小説。かなり昔に読んだけど、サッパリ覚えてません。
わるいやつら〈上〉 (新潮文庫)
松本清張先生の小説を映画化した野村芳太郎監督作。確かテレビで観たんだけどなー (・ε・)
<あの頃映画> わるいやつら [DVD]
2007年に製作された米倉涼子さん主演ドラマも貼っておきますよ。
松本清張・最終章 わるいやつら DVD-BOX
こんな本もありました。宇喜多直家、確かに悪そうですな~。
悪いやつら―謀将・宇喜多直家
なんとなく貼っておきますね。そこそこ面白そうな一冊。
悪い奴ら、最期の言葉
↧
悪いやつら(ネタバレ)
↧