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日本で一番悪い奴ら(ネタバレ)

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日本で一番悪い奴ら

日本で一番悪い奴ら

2016/日本 上映時間135分
監督:白石和彌
原作:稲葉圭昭
脚本:池上純哉
製作:由里敬三、遠藤茂行、木下直哉、中西一雄、矢内廣、細字慶一
エグゼクティブプロデューサー:田中正、柳迫成彦
企画:千葉善紀、赤城聡
プロデューサー:高橋信一、田中誠一
撮影:今井孝博
美術:今村力
照明:金子康博
録音:浦田和治
音響効果:柴崎憲治
編集:加藤ひとみ
音楽:安川午朗
音楽プロデューサー:津島玄一
主題歌:東京スカパラダイスオーケストラ、Ken Yokoyama
装飾:京極友良
衣装:宮本まさ江
ヘアメイク:小山徳美
キャスティング:杉野剛
助監督:是安祐
制作担当:宮森隆介
出演:綾野剛、YOUNG DAIS、植野行雄、矢吹春奈、瀧内公美、田中隆三、みのすけ、中村倫也、勝矢、斎藤歩、青木崇高、木下隆行、音尾琢真、ピエール瀧、中村獅童、白石糸
パンフレット:★★★★(720円/新聞を模したパンフ。情報が詰まってる&町山智浩さんのコラムが入ってて、オススメ)
(あらすじ)
大学時代に鍛えた柔道の腕前を買われて道警の刑事となった諸星(綾野剛)は、強い正義感を持ち合わせているが、なかなかうだつが上がらない。やがて、敏腕刑事の村井(ピエール瀧)から「裏社会に飛び込み『S』(スパイ)を作れ」と教えられた諸星は、その言葉の通りに「S」を率いて危険な捜査に踏み込んでいくが……。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




90点


『凶悪』の白石和彌監督が稲葉事件『グッドフェローズ』っぽく撮った」ということで、そりゃあ観る気マンマンでしてね。さらに、愛聴している「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」の映画時評コーナー「ムービーウォッチメン」の課題映画になったということで、今週水曜日にTOHOシネマズ日本橋で鑑賞いたしました。「スゲー面白かったのに!ヽ(´Д`;)ノ アァン」って感じですかね。ちなみに、今回の感想については、月曜日に偶然お会いした宇多丸師匠から「システムの問題ですよね (▼Д▼)」的なお話を聞いていた+木曜日に「か和もっち」にてかわもっちさんやはとこさんの感想も聞いていた=他の人の意見にも影響されている…ということは書き残しておきましょう(どことなく偉そうな文章)。


この日は横浜で打ち合わせ→ダッシュで21時10分の回に滑り込みまして。
TOHOシネマズ日本橋

2番スクリーン、6割ぐらいは入っていた記憶。
2番スクリーン


お話を超簡単に書くと、「1976年に柔道一直線だった青年・諸星が柔道特練員として北海道警に入る→1979年、機動捜査隊に行ってスパイ(エス)作りに目覚める→1984年、札幌中央署の刑事第二課暴力犯係(マルB)に移動して、ヤクザとの癒着を深める→1993年、道警本部の銃器対策課に異動して、エスたちと覚醒剤を密輸して金を作って拳銃を買うようになる→エスの黒岩の裏切りなどがあって失脚して夕張署に移動→2002年、すっかりシャブ中になり、エスの太郎の密告から覚醒剤取締法違反で逮捕される(元上司と太郎は自殺)」という、汚職警官の半生記でございます。最後、エンドクレジットとともに、東京スカパラダイスオーケストラ feat. Ken Yokoyamaによる「道なき道、反骨の。」が流れるんですが、スゲー良い曲だと思いましたよ。


なんか、非常に沁みましたねぇ…。




このブログをよく読んでいるような方はご存知だと思いますが、僕は元警官でして… (´∀`;) エヘヘ とは言え、もう20年近く前のことになるし、5年程度しか働いていないし、「だからなんだよ ( ゚д゚) クソガ!」って話なんですけれども! そういう目線から見ると、非常に懐かしく面白い映画でございました。物語終盤に入るまでは、ここ数年で一番笑いながら鑑賞していて、「これは100点の映画だな!(*゚∀゚)=3 ムッハー」なんて興奮したほどだったのです。

まず、警察知識がない人でも、「映画秘宝 2016年 08 月号」深町秋生先生が書かれていたように、マーティン・スコセッシ監督の「ウルフ・オブ・ウォールストリート」「グッドフェローズ」のような「実録ピカレスクモノ」として普通に面白い。特に刑事の諸星とヤクザの黒岩(中村獅童)、運び屋の太郎(YOUNG DAIS)、盗難車バイヤーのラシード(植野行雄)の4人のチーム感が最高で、「拳銃を大量に摘発(というか購入)するためにシャブの密売を始める」という本末転倒にも程があるシーンは笑いすぎて涙が出ました(監督は「高校球児が甲子園を目指す感じで」と演出したそうな)。


この4人のチーム振りが愉快なのです。
最高のチーム

あと、こういう地味に体を張ったアクションが多かったのも好きでしたよ。
アクションも良し!


つーか、本作の役者さんたちは警察側もヤクザ側も書くのが面倒くさいぐらいに素晴らしいんですが、YOUNG DAISさんの“気の良い下っ端感”と植野行雄さんの“怪しいガイジン感”は突出していたんじゃないでしょうか。銃器対策課次長・漆原役の勝矢さんも、観客が思ったことを代弁してくれる役割として愉快でしたね〜。それと、開始早々に柔道部顧問役で”世界のTK”こと高阪剛さんが、三角絞めを極められている柔道部員役で菊野克紀選手が、映画中盤に黒岩を脅すヤクザ役として武田幸三さんが出ていたりと、格闘家の起用が多かったのも好感が持てましたよ(グレート小鹿と飯を食う」なんて台詞もありましたな)。


綾野剛さんは超頑張った! シャブを打った場面の顔の演技は必見の素晴らしさ。
シャブを打った諸星

ピエール瀧さん演じる先輩刑事も良かった。「黒岩にハメられる」という末路も後の諸星の展開を暗示していて良し。
先輩刑事・村井(ピエール瀧)

中村獅童さん演じる黒岩は、いかにも裏切りそうな裏切り者。「アマレス」と「シャブ持ってトンズラ」のくだりが事実でビックリ。
ヤクザ黒岩

YOUNG DAISさんが演じた太郎は、「シャブをやめた」と言いながらハルシオンをポリポリ食う場面が100点の面白さ。
運び屋の太郎(YOUNG DAIS)

ラシード役の植野行雄さん、恥ずかしながら知らなかったので、本当にこういう人かと思ってました (`Δ´;) ヌゥ
盗難車バイヤーのラシード(植野行雄

僕らが思ったことにツッコミを入れてくれる次長役の勝矢さんも好きだったり。
銃器対策課次長・漆原(勝矢)

諸星がシャブを流す→因果的にシャブ中になるホステスの恋人役の矢吹春奈さんも、ヌードになったりと体を張ってて素敵だったし抱かれたいです(なぜか受け身)。
ホステス・由貴(矢吹春奈)


で、なんて言うんですかね、フィクション作品の中で自分が知っていたり体験したりしたことが違うように描かれると、人間、どうしてもイラッとするじゃないですか。それゆえに「映画の中の警察描写」に関しては気になってしまって、僕はついついツッコミを入れがちでして。別に自分の中で一定の基準があるワケではなく、例えば「あぶない刑事」とかはどうでも良かったりするんですが…。例を挙げると、日本警察の数々の不祥事をダイジェストに盛り込んだ悪徳警官映画「ポチの告白」稲葉事件も扱ってる)とかは、基本的には「よく作ったなぁ!Σ(゚д゚;)」と絶賛したかったのに、1点だけ「拳銃の弾倉の1発目は空」というあり得ない描写が入ってるところがどうしても許せなかった…という心の狭いアタシ。


「ポチの告白」は菅田俊さん演じる村雨良バダンと戦いながら汚職を繰り返す“ナイスな問題作”なんですが…(ほぼウソ)。
村雨良

この“ありえないシーン”のせいで台無しなのです… (ノω・、) バカバカ
ポチの告白のガッカリシーン


ただ、本作に関しては、「あえて過剰に演出しているんだな」と“心のハードル”が下がっている作品にもかかわらず、結構リアルだと感心するところが多くて。最初の「柔道特練員からの機捜隊配属」とか「警察の“新記録”へのこだわり」とか「あるある〜 (´∀`)」って感じだったし、書類を書いている時に先輩(青木崇高)からネチネチとイヤミを言われるくだりも「あるある… ('A`)」とゲンナリしてね。「下っ端がデスクを拭く&お茶を入れる」は僕も経験済みだし(苦笑)、変にクローズアップせずにサラリと「領収書、作っとけよ」なんて台詞を入れてたのも、その作業が日常に溶け込んでいる雰囲気がして良かった。ちなみに僕も同じ交番の巡査長から「青年」と呼ばれたりしたんですが、それは警察云々というより世代的なものでしょうな。あと、諸星が黒岩に呼ばれた時に“腹に付ける鉄板”は、あの形状からして機動隊の防護衣に入れるやつじゃないかな? 実際はもう少し後だけど、93年4月になった瞬間、制服が新しいのに変わるのもわかりやすくて良かったし、なんか細かい部分がしっかりしてて、うれしかったですよ。


ノルマ制に関しては、今は知りませんが、僕がいたころは普通にありました。
ノルマ制

ヤクザが刑事の耳を切ったりとかはさすがにやらないと思うけど、こういうのは全然許せます。
刑事への脅迫


そして、一番シンミリしたのが、ラスト。逮捕された諸星は弁護士に対して“警察への恨み節”を一切言わないどころか、むしろ「逮捕されてすみません」的な感情しかないんですよね…。「組織のために尽くした男の悲しい末路」なワケですが、あの帰属意識が抜けない心理は、ちょっとわかる。警察にわずか数年しか勤めていない僕ですら、そこしか社会を知らなかった分、辞めた時は「同じ釜の飯を食った仲間を裏切った」という気持ちも強かったから、26年も第一線で働いた諸星には凄まじい絶望感があったろうなぁと。まぁ、それでも覚醒剤に手を出したのはまったく同情できませんが、「“一番悪い奴ら”は諸星をノルマで追い詰めて利用した警察組織そのものだよな (・ε・)」と、白石和彌監督の思惑通りの感想を抱いた次第。


上記のような感想を読んだ白石監督はこんな風に思うのでは…という、どうでも良いアントニオ猪狩画像。
かかりやがったな......


だがしかし! 本作で全然乗れなかったのが、2001年以降の老けメイク。もうね、それまでが素晴らしかっただけに、「ウルトラマンレオ」第19話に毛が生えたレベルのクオリティにテンションが落ちたというか。綾野剛さんなんて体重を落として頑張ったみたいですけど、「老けメイクです!(o^-')b ドウ?」って感じにしか見えなくて。YOUNG DAISさんなんて白髪が入ってもあまりに若々しくて、映画に入り込もうと努力しても醒めちゃったんですよね…。あの「靴下を口に詰め込む&もう片方の靴下を首に巻いて歯ブラシで絞り上げる」という死にざまが凄惨で良かっただけに、製作者たちにはもう少し工夫してほしかったです。


その他、些細な不満ですが、TKOの木下隆行さんは優しそうでヤクザに見えなかったかなぁ。
関東ヤクザ(木下隆行)


そんなワケで、最後の老けメイク以外は最高の悪徳刑事映画でした (´∀`) ヨカッター 鑑賞後、すぐに原作の「恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白」を読んだんですけど、これもまたスゲー面白い上に映画の脚色の上手さに感心できたので、映画→原作の順で大正解でしたよ。「バブル紳士の身辺警護」とか「注射器を丸ごと食べたヤク中」とか見出しだけでも愉快なんですが、もっと酷い北海道警の悪行振りが確認できるので、ぜひ多くの人に読んでほしいというか、映画と原作本をセットで楽しむとよござんす。

でもね、これをもって、「警察官はクソだな!( ゚д゚)、ペッ」なんて思わないでほしい気持ちはあって。今年公開された“神父の児童虐待映画”「スポットライト 世紀のスクープ」を観た時と被るんですが(両作品ともパンフが新聞をモチーフにしていて、町山さんがコラムを執筆している…という、どうでも良い共通点)、本作の事件に関しては悪いのはアホみたいにノルマを押しつけるシステムなんですよ(諸星はある意味、「真面目な警官」だったワケだから)。とは言え、ノルマがまったくないと働かない公務員も多いので、そのさじ加減が難しいんですがー。ううむ、警察に関しては裏金問題とか特練員のこととかいろいろと書きたいんですけど、ごめんなさい、僕の脳では上手く処理できないので割愛! 何はともあれ、この手の「実録汚職警官モノ」って社会への問題提起として非常に良いと思うのでね、もっと作られたらいいのにな、そうだったらいいのにな (・∀・) オシマイ




稲葉圭昭さんによる原作本。「柔道仲間が支えてくれた」というくだりが好き。



白石和彌監督作。原作→映画の順で観て失敗した印象…。僕の感想はこんな感じ



主題歌CD。近々買う予定でございます。



菅田俊さんが大活躍する高橋玄監督作。低予算で頑張ってるんだけど、弾倉の一発目は(ry



稲葉事件を扱ったノンフィクション。kindle版が出たら読みますよ。



裏金問題を報道した北海道新聞社が道警に屈するという内容のノンフィクションっぽい。これは読む。



稲葉圭昭さんによる第2弾。読もうかしらん。











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