SHARING(シェアリング/111分バージョン)
2014/日本 上映時間111分
監督・脚本:篠崎誠
脚本:酒井善三
プロデューサー:市山尚三
撮影:秋山由樹
録音:百々保之
美術:宮崎圭祐
編集:和泉陽光
特技監督・視覚効果:田口清隆
助監督:酒井善三、宮崎圭祐
出演:山田キヌヲ、樋井明日香、木村知貴、河村竜也、高橋隆大、兵藤公美、鈴木卓爾、木口健太、清水葉月、小林優斗、吉岡紗良、三坂知絵子、鈴木一希
パンフレット:★★★☆(800円/ちょっと高いけど、作品の理解に役立つコラムやインタビューが読めるのでオススメ)
(あらすじ)
東日本大震災の予知夢を見た人を調査している社会心理学者の瑛子(山田キヌヲ)は、震災で死んだ恋人の夢をずっと見続けていた。一方、同じ大学の演劇学科に通う薫(樋井明日香)は、3・11をテーマにした卒業公演の稽古に追われ、ある日、仲間と衝突してしまう。薫もまた、この芝居を始めてから、同じ夢にうなされるようになっていたのだが……。(以上、映画.comより)
予告編はこんな感じ↓
91点
※本作に関しては、ネタバレを知らないで観た方が間違いなくイヤな気分になるので、未見の方はこの感想文を読まないでほしいんですけど、かなり低予算かつ独特なムードの映画ということで、いろいろと覚悟して観て!
※今回の記事は、脱原発的な面倒くさく浅い文章が書かれているので、そういうのが苦手な人は読まない方が良いです。
もう7月半ばなのに、今週は4月公開作の感想ばかり垂れ流して来たわけですが(汗)、やっと最後の1本をアップしておきますよ。「映画秘宝 2016年 06 月号」で紹介されていたのと、「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」内で宇多丸師匠が褒めていたので気になりまして(コメントも寄せてる)。5月1日=映画の日、テアトル新宿で鑑賞したんですけど、戦慄しました… (ノω・、) グスン
ロビーには、ポスターになった櫻井沙由理さんの切り絵や記事の切り抜きなどが展示されてました。
「戦慄」と言えば、「必殺仕事人」シリーズの「せんとりつ」を思い出す…というのはどうでもよござんす。
作品は、予知夢とかドッペルゲンガーとかを扱ってて、「これは夢なの? 現実なの?(´Д`;) ドッチ?」みたいな感じの描写がスゲー多くて、どことなく黒沢清監督作っぽいので(立教大学繋がりなんですって (゚⊿゚) ヘー)、僕にはそれほどストライクな作風ではないのですけれども! もうね、「映画を観てここまで怯えたことがあったか?」と思うほどに怖かった。2011年に「ザ・ウォード/監禁病棟」を観て泣いたことはありましたが、あれは「覚悟の量を見誤った」のも大きくて。本作は、驚いたのもあるけど、見せられた映像が余韻を引きずるほどに恐ろしかったというか。観終わった後、1人で日高屋に行ってアルコールで気を紛らわせるほどだった…と書けば、僕がどれほどイヤな気持ちになったか伝わるのではないでしょうか。ここまで読んで興味を持った方は、池袋の新文芸坐にて7月24日(日)〜27日(水)までレイトショー上映されるということでね、ぜひ足を運んでいただきたいほどなのです。
鑑賞直後の僕は「兄の鎬紅葉に怯える鎬昂昇」のようでしたよ(「グラップラー刃牙」より)。
この日は妻子が青森に帰省していたのもあって、家に帰るのが怖かった…怖かったの… (ノω・、) グスン
さて、雑に話を書いておくと、本作のメインとなる登場人物は、東日本大震災で恋人・清志(河村竜也)を亡くした社会心理学者の瑛子と、大学の演劇学科で震災をテーマにした芝居をやろうとしている学生の薫。瑛子は”虚偽記憶”について研究している中、恋人の夢を見たり、大学をさまよう怪しい男が学食を爆破する夢を見たり、薫から相談を受けたものの苛立って罵られたりしまして。で、薫の方は「『震災の話を演劇にしようとして対立する学生たち』という芝居」を巡って他の学生たちと対立したり、「『東日本大震災で赤子とはぐれた母親の夢』を見て以来、それを自分の記憶として認識してしまっている」ことを瑛子に相談してみるも、微妙にわかってもらえずに苛立って罵ったりするというね。
震災前に予知夢を見た人などを調査しつつ、喪失感を補おうとする瑛子と…。
被災はしていないけど、表現を通じて被災者の苦しみを理解しようとする薫が主人公。
そして、怪しい男が大学内をさまようのです。
その後、瑛子ったら、予知夢の通りに学食を爆破しようとする男の犯行を止めたり、「突然、東日本大震災の直前にタイムスリップして清志も生きてたと思いきや、そんなことなかったぜ (ノ∀`し ガッカリ」といった体験をしたりしてね。結局、薫が1人で演じることになった「『震災の話を演劇にしようとして対立する学生たち』という芝居」を鑑賞してみたら、なんかすっかり2人とも「いつかきっと会える 川´∀`)人(´∀`し ウフフ」気分。薫は、電車内で「夢で見た赤子と同じアザを持つ少女」を見たりして、映画はなんとなく良い雰囲気で終わるかと思いきや! 瑛子は高速増殖炉「もんじゅ」が爆発するのを目撃→夢だったものの、恐る恐る窓の外を眺めて終わるのでしたーー。
最後はこれが爆発してました。あっけない感じなのが余計怖いんだよなぁ… ('A`) イヤーン
なんて言うんですかね、「半裸の野郎どもが殴り合ってイェー!ヽ(`Д´)人(`Д´)ノ オッスオッス!」といった単純なアクション映画を好む僕ですよ。「『怖いことが起きたと思ったら夢だった…と思ったら、それも夢だった!Σ(゚д゚;し』という夢を見ました (´∀`し ナニガナニヤラ」といった描写が連発されたり、薫の芝居が現実なのか芝居なのかわからなくてグラグラさせられたり、よくわからないけどドッペルゲンガーが出現しまくったりする本作は、決して好みのタイプじゃないハズなんですが、しかし。あまりによくわからなさすぎて、「イヤな映画だなぁ… (´Д`;)」と思いながらもずっと惹きつけられてしまったという不思議。
「画面のあっちの人がなんかこっちを見てる」的な描写があったりと、とにかく“常に不穏なムード”でして。
中盤の「学食が爆破される場面」は無惨で恐ろしいものの、実は夢だったりする(というか予知夢)的な展開も多め。
なんとなく宮崎吐夢さんの「私事」を貼っておきますね。
そして、ほとばしるほど恐ろしかったのがラスト。2人の女性がなんとなくハートフルに着地して終わると見せかけて(この時点では僕も少しホッコリしてた)、「もんじゅ」が爆発するというのはね、文字通り冷や水を浴びせられた気分になったし、その後に外を眺める瑛子の何とも言えない表情がまた超怖い。何が見えているのかはまったくわからないんですが、例えその光景が「普通の日常」だったとしても、彼女が見た夢が予知夢という可能性もあるワケで。いや、何よりも恐怖したのは、「本作自体が現実を生きる僕たちの予知夢かもしれない」ということであり、本作のせいで僕はリアルにあの3.11の時に感じた絶望感を思い出させられたんですよね…。
パンフで篠崎監督が東日本大震災の時を振り返って、「いつの日か信じられないくらいのあっけなさで、いとも簡単に自分たちが暮らしているこの世界が崩壊してしまうかも知れない、という怖ろしい予感」「津波に呑みこまれる家々や東京電力福島第一原子力発電所が爆発する映像を見て、子供時代に感じた諦感がありありと蘇ってきました」と書かれていて、非常に気持ちがわかったというか。それほど怖かったくせに、いつの間にかノホホンと暮らしていた自分もまた怖い。僕は基本的に脱原発派だけれども、だからといって何か具体的に行動してるワケでもなく、出来る頭もなく。「はじめての福島学」とか読んで、「食べて応援しよう (´∀`)」「今年の家族旅行は『スパリゾートハワイアンズ』にするか (´∀`)」と思ったりしたけどさ、現時点で日本国内に“住民が帰れない場所”があるのも事実であり、その原因となった危険なモノを稼働するってのはどう考えてもナシなんじゃないかと思いながらも、賛成する人がいる現実もあって。ただ、やっぱりあの時に感じた恐怖がすべてだと思うんですけど、どうなんですかね…。
当時、この映像を見た時は絶望的な気持ちになりましたよ。
本作は、立教大学現代心理学部の研究プロジェクトの一環として「(3Dを使わない)映画の奥行きの表現」という課題で制作されたそうで(言われてみれば、奥行きが活かされていたような…というA-TO-DU-KE!m9`Д´) ビシッ)。何はともあれ、低予算感はありましたが、役者さんたちも妙に現実味があって良かったし、篠崎誠監督、いろいろな意味でスゴい映画を撮ったなぁと。99分の「SHARING アナザーバージョン」もあって、そっちはなんかハッピーエンドっぽい様子なんですけど、機会があったら観たいと思っております。おしまい。
篠崎誠監督作。この映画は全然好きじゃなかったです…。
予知夢繋がりでパンフに書いてあった作品。僕の感想はこんな感じ。
開沼博先生の著書。kindle版で読みました。
個人的にはジョー・ダンテの最高傑作。これを観ると核兵器に怯えていた子ども時代を思い出すのです。
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SHARING(シェアリング/111分バージョン)(ネタバレ)
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