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Channel: 三角絞めでつかまえて2
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人間の時間(ネタバレ)

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人間の時間



原題:인간, 공간, 시간 그리고 인간/Human, Space, Time and Human
2018/韓国 上映時間122分
監督・製作総指揮・脚本:キム・ギドク
製作:キム・ドンフ
音楽:パク・イニョン
出演:藤井美菜、チャン・グンソク、アン・ソンギ、イ・ソンジュ、リュ・スンボム、ソン・ギユン、オダギリジョー
パンフレット:☆(800円/ごめんなさい、デザインは素敵だけど、非常に不快なコラムがありました)
(あらすじ)
恋人とともに旅行を楽しむ女性、有名な議員とその息子、そして謎の老人と、さまざまな人びとを乗せ、船は出航する。かつては軍艦でありながら退役後はクルーズ船となったその船が大海原へと出た頃、開放的になった乗客たちは酒、ドラック、セックスと、さまざまな顔を見せていった。狂乱の後、疲れ果てて眠りについた彼らが目を覚ますと、船は霧に包まれた未知の空間に突入していた。何が起こったのか理解できない現実を前に呆然とする人びと。やがて乗客たちは生き残りをかけた悲劇的な事件を次々と起こしていく。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




90点


一応、「2020年3月公開で観たい映画の覚え書き」では「△」を付けたものの、正直なところ、キム・ギドク監督の性暴力問題が解決していないように感じてモヤモヤしているのもあって、観ないつもりだったんですけれども。ああん、愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」の週刊映画時評コーナー「ムービーウォッチメン」の課題作品になったので、「付き合いだしな ( ´_ゝ`) エラソウ」と、4月1日(水)、シネマート新宿にて、映画サービスデイを利用して鑑賞いたしました。「二つ我にあり… (`Δ´;) ヌゥ」と複雑な気持ちになりましたよ。


劇場は広めのスクリーン1ながら、観客は8人程度。入場者特典でもらったポストカード、なくしちゃった…。


僕の心境を代弁する「刃牙道」の一コマを貼っておきますね。
二つ我にあり......


最初にお話を超雑に書いておきますと、主人公は女性(藤井美菜)でしてね。恋人(オダギリジョー)とともに1週間の船旅を楽しんでいたところ、乗り合わせた政治家(イ・ソンジュ)がギャング(リュ・スンボム)とつるんで偉そうに振る舞ってまして。それを恋人が咎めたところ、スムースに反感を買い、さらに政治家が女性にムッシュムラムラしたのもあって、ギャング with 手下どもが夜中に襲撃! 女性は輪姦された挙げ句、恋人は殺されてしまうのです ('A`し ヒドイ さらに他の乗客も開放感からなのか理性がなくなって、明らかに違法っぽい薬物を摂取するわ、女性客をレイプするわと、船内は無秩序状態になって。絶望した女性は自殺しようとするも、船内で土を集める謎の老人(アン・ソンギ)に阻まれて、眠らされましてね。翌朝、目を覚ましてみれば、なんと海が消失→船は空を飛んでいたから(ここまでで映画開始から30分ぐらい)、空島編がスタートよッ!m9`Д´し ビシッ


ということで聴いてください、BON BON BLANCO「BON VOYAGE」↓(ラジオパーソナリティ風に)




政治家とギャングたちが暴力によって食料を確保し、驚くほど不公平に食料を分配して、船内の不満ボルテージがグングン高まる中、老人は船内でせっせと植物の栽培&ニワトリの飼育に精を出してましてね。妊娠が発覚した女性も「お腹の子」のために老人を手伝うようになると、正義ヅラが大好きな政治家の息子(チャン・グンソク)は女性に恋をしたのもあって、協力し始めるのです。で、あーだこーだあって、政治家の命令によって「食糧確保のための乗客皆殺し計画」が発動するも、船長(ソン・ギユン)が悔し紛れに食料を燃やすわ、常軌を逸した状況に仲間割れが勃発してギャングが政治家を殺しちゃうわ、女性がギャングを射殺するわと、てんやわんやの大騒動ですよ (´∀`し アラアラ 結局、老人は自分を食料化して空に身を投げて、政治家の息子は空腹のあまりにニワトリを食べようとしたので射殺→女性だけが生き残りまして。ニワトリが卵を産むようになり、死体を土壌にして育った船内の植物で食いつなぐことができるようになると、女性は子どもを出産して、平和に暮らした…と思いきや! 成長した子どもは銃を手にした上に、母親に対してムッシュムラムラするのでしたーー ('A`し イヤーン


映画とはまったく関係ないんですが、ふと懐かしくなったので、BON BON BLANCO「だって、女の子なんだもん!」を貼っておきますね↓




「ONE PIECE」「空島編」からコマ割りについていけなくなって脱落して、己の「老い」を実感するようになったんだよなぁ…なんてことは置いとくとして。本作は「人間」「空間」「時間」「そして人間」(これが原題)という全四章で語られていて、“神の使い”的な老人が残した血の足跡が「∞」→円環構造(人間の営みは繰り返されていくということ?)を示唆していたりと、「人間社会の縮図」になってましてね。ほとんどのキャラが劇中で名前を呼ばれない上に(恋人が「タカシ」と呼ばれている程度)、その性格もわかりやすく戯画化されていて(例えば「政治家」は懐柔が上手くて非道だが「息子(というか「血」?)」には思い入れが強い)、日本語しか話せない人と韓国語しか話せない人の会話がスムースに成り立ったり、時間の流れが異常&登場人物全員がそこに疑問を抱かなかったりと、かなり寓話的な内容なんですよ。だから、キム・ギドク監督的には納得できるんでしょうけど、突っ込める部分がムゲンバインだし、暴行、レイプ、カニバリズムなどなど暴力的なシーンや状況がとにかく連発されるので、ハッキリ言って、乗れない人も少なくないんじゃないかしらん。

ただ、僕はスゲー面白かったです。事前情報をまったく入れてなかったので、空島編に突入しした時は(してない)素直に驚いたし、次々と起こる最悪な展開には嫌悪しつつも「この先はどうなるんだろ… (´Д`;)」と惹きつけられちゃったというか。僕的にツボに入ったのが、チャン・グンソク演じる政治家の息子で、正義ヅラをするくせにちゃっかり女性をレイプするし、親やギャングを非難しながらもその恩恵には預かるし、極限状態に陥った途端に「女性への思いやりゲージ」が一気にゼロになるしと、鮮やかなクズ野郎なんですが、しかし。日和見な彼こそが最も“人間”に近いんじゃないか…なんてね。本作は体を張って頑張った藤井美菜さんが最高だったんですが、こんな最低なキャラをキッチリ演じたチャン・グンソクもマジで偉いですな。あと、感動したのがラストで、せっかく苦労して産み育てた息子が成長するとすっかり「厭な顔」になって母親を追うというオチは超最悪(褒め言葉)なんですけど、それを俯瞰的な構図で撮ったビジュアルが最高でね…(ちょっと「神の視点」っぽい)。キム・ギドク監督作はとにかくヘビーすぎるので積極的には鑑賞してませんが(汗)、今まで観た中で一番好きになったほどでしたよ。

宇多丸師匠が「ミッドサマー」評の中で「『その人にしか作れない』変な映画、っていうのはもう、それだけで大好き!(▼∀▼)」と仰ってましたけど、本作もモロにそんな印象。まぁ、僕も47歳のオッサンですから(苦笑)、今さら「極限状況になると人間は醜い本性をさらけ出して〜」的な映画を観ても…と思うところもなくはないんですが、ここまで徹底して描かれると清々しいなぁと(キリスト教モチーフが好きなのは知ってましたが、パンフに書かれていた女性の名前が「イブ」&政治家の息子が「アダム」とストレートすぎてビックリ)。こんな無茶な作品はキム・ギドク監督にしか作れないし、彼が唯一無二の映画作家なのは間違いないと、あらためて感心したんですが、しかし。問題なのはここからじゃ ( ゚д゚) ナンダコレ


なんとなく徳川光成の画像を貼っておきますね(「バキ」より)。



冒頭にも書きましたが、やっぱりキム・ギドク監督の性暴力問題が解決していないじゃないですか…。現在は「被害を主張した女性と告発番組を刑事告訴した」「抗議した女性団体を訴えた」ということらしいですが、こういった状況下の人が関わった作品を観る気まずさというか、居たたまれなさも感じましたよ、残念ながら。超素晴らしいアニメーション映画「音楽」を観た時を思い出したんですけど(僕の感想はこんな感じ)、被害者への対応も「謝罪している風を装いながら『オレ悪くない』的な駄文を投下した松江哲明監督」っぽいしさぁ…。こういうのってどう向き合えばいいのか、悩んでしまうのです。もちろんマイケル・ジャクソンのように冤罪というケースもありますが、キム・ギドク監督のケースは「黒」だと思うしさぁ… (´・ω・`) ウーン 

酷いと思ったのが本作のパンフで、まず気になったのが樋口毅宏先生がキム・ギドク監督の事件に触れて「もちろん擁護できることではないし」と書きつつも「ギドクは謝罪しています」なんて書かれていたこと。こちらの記事によると、確かに謝罪はしてるけど「誤解があった」というスタンスを崩してないのがモヤッとする部分なのに(これってセクハラやパワハラをする人の常套句ですよね)、そこをぼやかしている感があったんですよね…。公式パンフで追求しろとは思いませんが、ちょっとズルいというか。ただ、それ以上に腹が立ったのが、本作を上映して物議を醸した「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」のディレクターの塩田時敏さんのコラムで、「監督の性暴力案件が事実なら」という文章がデリカシーゼロだし(少なくとも最初の告発は監督も謝罪していて「事実」なのだから)、そもそも映画祭に来た「#metoo」問題としての抗議を「政府による制作助成金取り下げ問題」と同じ話にするのは乱暴すぎるでしょ(「それとこれとは話がべつ!」というか、だったらせめて新井浩文被告のせいで大々的に公開できなかった「台風家族」を引き合いに出せば良いのに)。

僕だって大麻やら違法薬物やらで捕まった方たちの作品は別に自粛する必要はないと思うけど(例えば高野政所さんの名盤「Enak Dealer」はダウンロード販売した方が良いと思う)、キム・ギドク監督の件は被害者がいることじゃないですか。それを棚に上げて他の問題を雑に混ぜながら、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎いのか?」とか「犯罪を憎んで映画を憎まず」とか「我々はいったい、いつの頃から寛容という心を忘れてしまったのだろう…」とか「貧すれば鈍するのだろうか…」とかとか、自分に酔った文章を垂れ流しているけどさ、僕からすれば「#metoo」問題として抗議した人たちではなく塩田さんの方が鈍しているように見えちゃった♪ (*ノ▽ノ) キャッ まぁ、映画祭のディレクターとして抗議への対応が大変だったのかもしれませんが、せめてもう少し「歩み寄った文章」を書けば良いのになぁと(そしてパンフ編集の人もちゃんとアドバイスしてあげれば良かったのに)。

いや、僕だってこの問題に答えは出せなくて。ううむ、ロマン・ポランスキー監督作や、ウディ・アレン監督作ハーヴェイ・ワインスタインジョン・ラセターが関わった映画などなど、楽しんで観てきたしさぁ…。とはいえ、もう“そういう時代”じゃないんじゃないかって。だって、やっぱりそうなると「誰かを傷つけようと傑作になれば良かろうなのだぁー!(`∀´) フハハハハハ」とか「あの人、セクハラとパワハラが酷いけど『結果を出す』から仕方ないわね (´∀`し ガマンガマン」といった状況がなくならない気がするし…なんて書いたところで、難しいことを考えすぎて知恵熱が出てきたのでね(苦笑)、後は頭の良い方々にお任せするとしますかな ( ´_ゝ`) フフフ そう、「あの鐘」を鳴らすのはあなた、あの鐘を鳴らすのはあなたなのです…(問題を他者に丸投げした割には偉そうな文章)。


ということで、和田アキ子さんの名曲を貼っておきますね↓ なんか責任を上手く押し付けられた気になって好き。




その他、思ったことを書いておくと、「オダギリジョーさんvsリュ・スンボムのアクションが観たかった(無理)」とか「一番共感したのは、体が大きめの乗客の『この体じゃ1つじゃ足りない… (´・ω・`) オニギリ』という台詞」とか「老人を話さない設定にしたせいで、女性の台詞が過剰に説明的になってて笑った」とか「男性社会の暴力性が醜く強調されている→自省的な作品と言えなくもないのかな…」とかとかとか。本当にね、年間ベストに入れたいぐらいにスゲー面白かったんですけど、残念ながら監督への不快感も拭えなくて、「二つ我にあり」という複雑な気持ちになった次第。まぁ、僕なんて「単なるクソ消費者」でしかないから、結局は「好奇心と不快感を天秤に掛けた時にどっちに傾くか」って判断基準で行動しているんですけど、ううむ、今後はそういうのも良くないのかなぁ…なんて「自問自答を繰り返す時間」こそが「人間の時間」なのかもしれませんな(上手いことを言った風のドヤ顔を添えてーー)。




キム・ギドク監督の前作。僕の感想はこんな感じ。



松江哲明監督がプロデュースしてますが、「音楽」は観てほしいし、関わっていない原作漫画も読んでほしいのです。









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