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ハッピーボイス・キラー(ネタバレ)

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ハッピーボイス・キラー

ハッピーボイス・キラー

原題:The Voices
2014/アメリカ 上映時間103分
監督:マルジャン・サトラピ
製作:マシュー・ローズ、アディ・シャンカール、ロイ・リー、スペンサー・シルナ
製作総指揮:クリストフ・フィッサー、ヘニング・モルフェンター、エリカ・ポートノイ、チャーリー・ウォーケン、キャシー・シュルマン、アダム・ストーン、ジョン・パワーズ・ミドルトン、ダグラス・セイラー・Jr.
脚本:マイケル・R・ペリー
撮影:マキシム・アレクサンドル
美術:ウド・クラマー
編集:ステファン・ロシュ
音楽:オリビエ・ベルネ
出演:ライアン・レイノルズ、ジェマ・アータートン、アナ・ケンドリック、ジャッキー・ウィーバー、アディ・シャンカール
パンフレット:★★★(600円/デザインと高橋ヨシキさんのコラムが素敵)
(あらすじ)
不思議な魅力を持つ青年ジェリー(ライアン・レイノルズ)は、バスタブ工場で働きながら代わり映えのない日常を送っていた。同僚の女性に恋心を抱いたジェリーは、精神科医の助けを借りながら彼女との距離を縮めようとするが、デートをすっぽかされたことで殺人事件を起こしてしまう。ジェリーはペットの邪悪な猫と慈悲深い犬に導かれながら狂気にとらわれていき、事態は予想外の展開を迎える。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




79点


※今回の記事は、「ラースと、その彼女」「ねがい」のネタバレに触れているので、未見の人は読まないで!

最初はあまり興味がなかったのに、なんとなく観たくなっちゃうことってありませんか? 一応、「観たい映画の覚え書き」では△を付けていたものの、確か「猫侍 南の島へ行く」を観た時に流れた予告編にはさほど惹かれなかった…ハズだったんですが、しかし。日が経つにつれて、なぜか気になってしまったので、10月中旬の公開終了間際、各種サービスデーじゃないにも関わらず、シネマート新宿で観ちゃいました。「わかってはいるが、わかるわけにはいかん!! (ノДT)」と思ったり。


シネマート新宿サービスデーを駆使すれば1100円で観られるのに… (´・ω・`)
シネマート新宿で観ました


正直、予告編もウロ覚えだったんですが(苦笑)、犬や猫や生首が話していたのは覚えていたので、「どうせポップでキッチュでオサレな殺人鬼映画なのだろうよ (`∀´) ヤレヤレ」といったボンヤリしたイメージしかなかったんですけれども。実際に観てみたら「幼少期のトラウマから殺人鬼になってしまった若者のお話」だったので、結構ビックリしたというか。話しかけてくる犬や猫や生首は、統合失調症を患っている主人公ジェリーの“心の声(Voices)”なんですね。


犬と猫の声などはライアン・レイノルズ本人が演じてたみたいですな↓




お話を簡単に書いておくと、バスタブ工場で働く“善良だけど変わった青年”ジェリーは、同僚のフィオナ(ジェマ・アータートン)に片想いしているんですが、不運が重なって殺害してしまいまして。慈悲深い犬のボスコと、現実的で皮肉屋の猫のウィスカーに相談しながら(って、自分自身なんですが)、死体を自宅で処分するんですね。その後、生首だけになったフィオナに命令された(って、自分自身なんですが)ジェリーは、恋仲になったリサ(アナ・ケンドリック)や、同僚2人が失踪してジェリーに疑いの目を向けたアリソン(エラ・スミス)も殺してしまって。精神科医のウォーレン博士(ジャッキー・ウィーヴァー)に泣きながら真相を告白&拉致するも、警察が自宅を包囲したので地下から逃走! ガス爆発によって煙が充満する中、己の罪を自覚したジェリーがそのまま死を選択すると、天国っぽい場所に死んだ両親&殺した女性たち&イエス風の人がいて、みんなで「Sing a Happy Song」を歌い踊って映画は終わってました。


最後はこんな感じ。何気にアナ・ケンドリックの歌が上手くて笑いました。さすが!
楽しげなエンディング

The O'Jaysが歌う「Sing a Happy Song」を貼っておきますね↓




マルジャン・サトラピ監督にとって今作は請負仕事だったみたいですけど、こんな陰惨で変な話を見事に映像化&面白い作品にしたなんて、「スゲー才能あるな!Σ(゚д゚;)」と。僕は彼女が描いたコミック「ペルセポリス」を読んだことしかなかったんですが、彼女が監督した映画も観たくなるほどでした。あと、「お前がデッド・プール役なの? ┐(´ー`)┌ ダイジョウブ?」なんて若干舐めていたライアン・レイノルズの妄想と現実の狭間で葛藤しまくる演技も素晴らしくて、今作は彼のキャリアにとって非常に重要な1本になったのではないでしょうか。


今までで観たライアン・レイノルズの中で一番良かったです。
ジェリー(ライアン・レイノルズ)


いや、非常に考えさせられたというか。フィオナを刺してしまったり、リサの頸椎が損傷したりする“タイミングが良すぎる不運”に関しては少し乗れないんですけど、「統合失調症の人って、こんな精神状態なのかなぁ (・ω・;) ウーム」と。ウォーレン博士が「誰だって“心の声”が話しかけてるのよ」的な台詞を言ってて、実際にいわゆる“普通の人”でもそういう部分はあると思うんですが…。「現実と区別つかないほどのその“声”に影響されてしまったら?」と考えると、僕だって“心の病を抱えている人”と大差ない気がしてしまう(まぁ、もちろん”声”とは上手く付き合いながら生きているワケですけど)。


ジャッキー・ウィーヴァー、「アニマル・キングダム」のイメージが強すぎて、いつ牙を剥くかドキドキしてました…。
ウォーレン博士(ジャッキー・ウィーヴァー)


あと、「ジェリーがクスリを飲むと妄想が止まる→寂しい現実に戻ってしまう→あえてクスリを飲まずに妄想の世界に浸る」というくだりは、泣けた。まぁ、ハードすぎる現実を妄想ミュージカルで逃避する「ダンサー・イン・ザ・ダーク」などを連想したんですけど、これも大なり小なり実際に起こり得るというか。僕だって「なぜ大学受験の時、1校しか受けなかったのか?」なんてこともあっただけに、他人ごとに感じられなくてね…(しんみり)。いや、今だって、もし奥さんと娘がいなかったら寂しすぎて生きて行けないから、妄想とかにドップリ浸りそうだもの (´・ω・`)


この場面、ユニークに見えますが、現実では腐った生首と話しているのです。
生首と会話


最後、自分の罪深さを自覚して死んだジェリーが天国っぽい場所に行った…ってのも妄想なんでしょうな。つーか、いくら「苦しむ母親を殺してしまった」というトラウマのせいで統合失調症が悪化してしまったとしても(つーか、ジェリーの両親はマジでクズ)、何の罪もない女性を3人も殺害しているんだから、「なに勝手にハッピーエンドヅラしてんだ、このクソ野郎 ( ゚д゚)、ペッ」的に思わなくもないんですけれども。ライアン・レイノルズの名演もあって微妙に共感してしまう部分が多かったりするし、ううむ、でもやっぱり肯定もできないし…という面倒くさい心境に陥った次第。


ということで、僕の気持ちを代弁する「無謀キャプテン」の見開きページを貼っておきますね。
わかってはいるがわかるわけにはいかん!!


その他、全然関係ないんですけど、同じ「言葉を話せない対象と脳内で会話する人」映画繋がりとして、あらためて「ラースと、その彼女」が好きになれない理由を自覚したというか。ジェリーは殺人鬼ですが、己の行為は自覚した上で彼なりに責任をとったから、それなりにスッキリするものの、ラースの方はテメエの都合でダッチワイフを墓地に埋葬して、「さ、次の恋人が待ってるッス♪(*゚∀゚)=3 ムッハー」って、自分の行為に無自覚だからイラッとしたんだなぁと。楳図かずお先生の名作短編「ねがい」の主人公のように「お前がいると他の女性と付き合えないのだっ!!ヽ(TДT)ノ」と泣きながらビアンカを破壊してほしかった…って、どうでも良いですかね (ノ∀`) エヘヘ


ラースには、こんな風にビアンカを破壊してほしかったです(「ねがい」より)。
ほかの人と友だちになれないのだ!


ジェリーのせいで恐ろしい目に遭ったウォーレン博士が最後まで「あの子は病気なのよ!(´Д`;し」と助けようとしていたように、一番悪いのは病気じゃなく“孤独”という着地もスゲー好きでして。1800円払った価値はあったというか、なんかね、上手く書けないんですけど、不思議な余韻の映画でした。ちょっとグロ&ゴアなシーンもありますが、オススメですよ~。




マルジャン・サトラピ監督作。コミックは素晴らしかったので、映画も観ないとなぁ。



なんとなく連想したクレイグ・ガレスピー監督作。僕の感想はこんな感じ



なんとなく連想した想田和弘監督作。“正常”と“病気”の境界はどこにあるのかを考えさせられる映画なのです。



評判の悪いライアン・レイノルズ主演作。そんなに嫌いじゃないというか、僕の感想はこんな感じ








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