ヴィジット
原題:The Visit
2015/アメリカ 上映時間94分
監督・製作・脚本:M・ナイト・シャマラン
製作:ジェイソン・ブラム、マーク・ビエンストック
製作総指揮:スティーブン・シュナイダー、アシュウィン・ラジャン
撮影:マリス・アルベルチ
美術:ナーマン・マーシャル
衣装:エイミー・ウエストコット
編集:ルーク・シアオキ
音楽監修:スーザン・ジェイコブス
出演:キャスリン・ハーン、ディアナ・デュナガン、ピーター・マクロビー、エド・オクセンボールド、オリビア・デヨング
パンフレット:★★★(720円/宇野維正さんと高橋諭治さんと鷲巣義明さんの座談会が面白かった)
(あらすじ)
休暇を利用して祖父母の待つペンシルバニア州メインビルへとやってきた姉妹は、優しい祖父と料理上手な祖母に迎えられ、田舎町での穏やかな1週間を過ごすことに。祖父母からは、完璧な時間を過ごすためにも「楽しい時間を過ごすこと」「好きなものは遠慮なく食べること」「夜9時半以降は部屋から絶対に出ないこと」という3つの約束を守るように言い渡される。しかし、夜9時半を過ぎると家の中には異様な気配が漂い、不気味な物音が響き渡る。恐怖を覚えた2人は、開けてはいけないと言われた部屋のドアを開けてしまうが……。(以上、映画.comより)
予告編はこんな感じ↓
93点
※この映画に関しては、小ネタ解説などが充実しているので、カゲヒナタさんの感想とか読めばいいんじゃないかしらん。
TOHOシネマズ新宿で観て来ました。「素敵なジュブナイルですな… ( ;∀;) ホッコリ」と感動しましたよ。まぁ、宣伝でアピールするほど、「衝撃の展開が!Σ(゚д゚;)」的な映画ではないんですけど(苦笑)、ネタバレを知らないで観た方が絶対面白いのでね、気になってる人はぜひ劇場に足を運んでから当ブログを読んでくださいな。
8番スクリーンで観たんですが、場内は満席でした。人気あるんだなぁ。
M・ナイト・シャマラン監督の映画は嫌いじゃないけど、そんなに好きというワケでもなくて。「観たい映画の覚え書き」では「○」を付けたものの、タイトルが「ヴィレッジ」と似てることもあって、なんかすっかり観た気分(雑な思考回路)。観に行かなくても良いかなと思っていたところ、今週のムービーウォッチメンの課題作品になった&すでに宇多丸師匠が「最高です!m9▼Д▼) ビシッ」なんて絶賛しているから、気になるのが人情じゃないですか。ただ、僕はいわゆる「シャマラー」「シャマラニアン」「シャマラニスト」「おシャマさん」などと呼ばれるほどのファンじゃないから、「そこそこ愉快」程度の感想に落ち着くかと思いきや! シャマラン監督作の中でもズバ抜けて好きな作品になったのだからビックリいたしました(今までのベストは「アンブレイカブル」
)。
話を雑に書きますと、母親の元を離れて、姉弟が初めて祖父母に会いに行く&1週間宿泊することになりまして。2人もスゲー優しくて良い人であり、これは楽しく過ごせるかと思っていたら、祖母は夜間にゲロをオロロンオロロンと吐きながら歩いたり、祖父は大便を漏らしたオムツを小屋に隠していたりと、鳥越たかこさんが「奇行な!(`Δ´;し Here we go now!」と歌い出すほどに奇行が目立ってきましてね(不要なリンク)。姉弟は「お年寄りだから仕方ないよね… 川´・ω・)(・ω・`) ネー」と気にしないように努めるものの、祖母は後ろを向いた際に半ケツサービスをしたり(100点の名シーン!)、壁でツメ研ぎをしたり、祖父はパーティに出掛けようとしたり、「なんで尾行する!」なんて叫びながら通行人に殴りかかったりするなど、2人とも異常行動が加速していくのです。で、僕はすぐに気がつきましたよ、「典型的な異星人侵略映画だな!(`∀´) フハハハハハ」ってね。
シャマランの野郎、予告編でこんなことをヌカしてましたが、僕はすっかりお見通しでしたよ ( ̄ー ̄) ニヤッ
宇多丸師匠が「アフターアース」評の中でおっしゃっていたように、シャマラン監督と言えば「ワンアイディアのSFとかホラー物を作る人」じゃないですか。さらに、どんでん返し的な展開が多いし、今作もそういう宣伝をしていただけに、「痴呆症って大変だよね… 川´・ω・)(・ω・`) ネー」なんて「ペコロスの母に会いに行く」ライクな話で終わるワケがない。実は、町全体が異星人に侵略されていて、祖父母も乗っ取られている真っ最中。ただ、精神を完全に支配されないよう必死に抵抗していて、その“心の中の戦い”が奇行として現れてしまったのです(だから、2人とも自殺しようとしたりする)。
家に訪問してきた町の人たちはまだ意識を奪われていない祖父母が町の秘密を姉弟に漏らさないかどうかを監視していて、祖母がPCのカメラを破壊したのは「回線を通すと正体がバレてしまうから」ではないか。祖父母が家出同然に飛び出した母親を今でも許さないのは、異星人が支配している町に近づけたくなかったからーー (ノД`) オヤゴコロ 要は「トミーノッカーズ」や「SF/ボディ・スナッチャー」
、「光る眼」
、「複製された男」
みたいなものであり(1つウソ)、祖母が例え話として「他の惑星から来た人々が水の中で暮らしている」なんてことを話し出した時は「ほら、思った通り!ヘ(゚∀゚*)ノ ヤッタァ!」と勝ち誇ったほどでしたよ。
鑑賞中の僕の気持ちを代弁する寂海王の画像を貼っておきますね(「バキ」第25巻より)。
ところがどっこい、蓋を開けてみれば、「祖父母は別人だった」というオチ。過去に子どもを殺したりしていたマッドな老婆 featuring 老人が、近所の精神病院で相談員のボランティアをやっていた“本物の祖父母”を殺して入れ替わっていたのでした (ノ∀`) ナァンダ カメラを壊したのは、スカイプを通して母親に正体がバレないようにするためであり(実際、カメラが直ったことでバレる)、そう考えるとオリジナル祖父母の知人がやってきた時に留守にしてたのもわざとだったのかと。視界がクリアになると、「異星人侵略映画」なんて思っていた自分がほとばしるほどバカみたい。どうしてそんな風に思っちゃったのカナー。
この2人、精神病院から逃げ出した患者だったのです。勘の良い人ならすぐ気付くかも。
というか、僕が何よりも褒めたいのは脚本で、まずミスリードが丁寧だった!m9`Д´) ビシッ いや、正直なところ、具体例が思い出せなくて申し訳ないんですが、この「実は別人だった!」的な展開って、よくよく考えれば「よくある話じゃないかー 川 ゚д゚)」と歌いたくなるプロットではあるじゃないですか。ただ、その入れ替わる対象を老人にすることで「ボケているのだろう」と観客に思わせているんですよね。
さらに、劇中ではちゃんと「後から考えれば、そんなこと言ってた!Σ(゚д゚;)」という謎解きに必要な情報の数々を提示しながらも、「祖母と母はケンカしていた→家出した時の記憶は思い出したくないのだろう」とか「祖父母の知人がまた“元役者志望”だった→大したことがない場面なのだろう」とか、上手く設定や描写を重ねることで、観客に「だろう鑑賞」をさせて、謎を見事に消臭していたと思うのです。「異星人侵略映画」と思った僕はちょっと走りすぎだったかもしれませんが(汗)、祖母に“例え話”として「他の惑星から~」なんて話をさせたのだって、監督自らのフィルモグラフィーを逆手に取ったミスリードだった…ってのは考えすぎでしょうか (´・ω・`) ツカレテルノカナ...
そういえば、この映画の時も同じようなカン違いをしたっけ…。
そして、「傷ついた家族が再生する物語」としても素晴らしかった。もうね、母親、姉のベッカ、弟のタイラー(a.k.a. Tダイアモンド)の3人は離婚によって心の傷を抱えているんですが、それを「母親→子どもの大切さをあらためて確認することで、自分はすでに祖父母に赦されていることを自覚する(たぶん、自分も子どもが何をしようとも愛し続けるだろうと思ったから)」とか「ベッカ→自分の価値を取り戻して、鏡に向き合えるようになり、この顛末を1本の作品にする」とか「タイラー→アメフトの試合で硬直して動けなかった自分を振り切った上に、潔癖症なのにウンチを顔に塗られてゲッソリした記憶もラップにして“物語”に昇華する」とか、全員が見事な着地を迎えるのだから、感動するしかないというか。
序盤、母親が見送る時に“おどけ”から泣き顔になるくだりで胸を掴まれちゃいました。
母親と少し顔が似てるのが良い姉ベッカ。ジジイに襲われた時、弟に「逃げて!」と叫ぶ気高い精神に涙… (ノω・、) オネエチャン...
そして新進気鋭のラッパー、Tダイアモンド! 驚くといちいち女性ミュージシャンの名前を叫ぶのが愉快だったり。
特にTダイアモンドのラップに関しては、今作にユーモアを加えて爽やかにしているだけでなく、ラップという表現自体も魅力的に見せていて。事件解決後、鏡に向かって姉が髪を解かすのをバックに彼がその顛末をラップするエンドクレジットは、個人的には「バクマン。」級にグッときました。シャマラン監督がフレッシュ・プリンス親子と接することでそんな影響を受けたのなら、「『アフター・アース』も無駄じゃなかったんだな… (ノ∀T) ヨカッタネー」なんて思ったり(って、勝手な妄想ですが)。
ちなみに最後のラップに「リーサル・ウェポン」「メル・ギブソン」が出たのは、「リーサル・ウェポン2」のこの場面が元ネタ…という「映画の秘密ドットコム」情報。
そりゃあ、物語としておかしいところがいろいろあるのは確かですよ。いくら遺恨があったとしても、その前&送った当日に母親と祖父母はコミュニケーションをとるだろうし、そもそも「スカイプが繋がった時点で挨拶しろよ」って話だし、精神病院から2人も逃げ出しているならもっと騒ぎになるだろうし、周囲の人たちももっとオリジナルの祖父母を探すだろうし、あのタイミングで姉が地下室を確認するのはどうかと思ったし。
ただ、登場人物たちの描き方が非常に良くて、僕はすっかり母親や姉弟に感情移入してたので、そこら辺の瑕疵は全然気にならなかったです。むしろ小さいころに読んだ赤川次郎先生の「サスペンスっぽいジュブナイル」って感じがしてストライクでした(ちなみに僕的には「ニセ祖父母は死んでいない→子どもたちは殺人はしていない」と思っております)。唯一気になるのが、今どき「精神病院から逃げ出した患者が殺人をする」という部分なんですが(汗)、「2人とも死のうとするジェスチャーを見せる→苦しんでいる→病気が悪い!m9`Д´) ビシッ」としているので、赦してはいただけないだろうか(唐突な問い掛け)。
こういうシーンを入れることで、単なる”悪”としては描いていない気がしないでもないと思わないでもない気がしな(ry
見終わってみれば、例によって「ワンアイディアのホラー物」ではあるんですけど、例えばシャマラン監督が初めて使ったPOVという手法だって、最後に今作を「ベッカが撮った作品」にしたことでちゃんと必然性があるし、スゲーよく考えられて作られているなぁと。自分に娘が出来てからは「子どもが出ている映画に弱い」というのもありますが、僕は今までの監督作の中で一番面白かったし、読後感の良いジュブナイルを読んだような気持ちになれて、本当に観て良かったです。そんなワケで、これからもシャマラン監督には期待できそうですが、今度は「だろう鑑賞」をして騙されないよう、「かもしれない鑑賞」を心掛けたいと思います…って、なんだそりゃ ( ゚д゚)、 ペッ
一番好きだったシャマラン監督作。そういえば僕も骨折したことがないのです…(でも、ヘルニアにはなってる)。
シャマラン監督の前作。僕の感想はこんな感じ。
実は観てないシャマラン監督作。一応、観ておこうかなぁ (・ω・;) ウーム
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ヴィジット(ネタバレ)
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