マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白
![マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白]()
原題:Madame B., histoire d'une Nord-Coreenne
2016/韓国、フランス 上映時間72分
監督:ユン・ジェホ
製作:ギョーム・デ・ラ・ブウレイ、チャ・ジェクン
撮影:ユン・ジェホ、タワン・アルン
編集:ナディア・ベン・ラキド、ポーリーン・カサリス、ソフィ・プロー、ジャン=マリー・ランジェル
音楽:マシュー・ルノー
出演:マダムB
パンフレット:★★★★(600円/薄くて小さいけど、値段の割に意外と情報量があって、頑張ってる感じ)
(あらすじ)
10年前に家族のため北朝鮮から中国へと出稼ぎに来た北朝鮮女性B(ベー)。しかし、彼女はだまされて中国の貧しい農村に嫁として売り飛ばされていた。その事実に直面した彼女は、憎んでいた中国の夫と義父母との生活を受け入れ、そこで生きていくために北朝鮮からの脱出を請け負う脱北ブローカーとなることを決意する。そして彼女は北朝鮮に残してきた息子たちの将来を案じ、彼らを脱北させたのち、彼女自身も韓国へと渡る過酷な道を選択する。(以上、映画.comより)
予告編はこんな感じ↓
70点
※この映画に関しては、こちらの監督インタビューや佐々木俊尚さんのコラムを読むと良い気がします。
「2017年6月公開で観たいと思っている映画の覚え書き」を書くために、ぴあ映画生活をチェックしていたら、本作が目に留まりまして。「北朝鮮から中国の寒村に売り飛ばされ、のちに韓国への脱北を図る中年女性“B“の姿を密着取材」「あまりにも数奇にして壮絶な彼女の生き様が、観る者に衝撃を呼び起こす1本だ」なんて説明文に興味を惹かれたんですよ。ただ、仕事が忙しいので観ることはないだろうな〜とも思っていたんですが、「ミニシアター共通スタンプラリー」をのスタンプを埋めるため、急遽観ることに決定。6月29日、渋谷シネパレスで「怪物をささやく」を観てから、イメージフォーラムに移動して、本作を鑑賞いたしました。「大変すぎる… (`Δ´;) ウーン」と思ったり。
ロビーにあった記事の切り抜きはこんな感じ。
![記事の切り抜き]()
ちなみにスタンプラリーは完遂したんですが、結局はムダにしてしまったというね…。
![スタンプラリー完遂]()
「マダム・ベー」というタイトルから「マダム・ヤン」を連想してお腹が空く…。そんなふうに考えていた時期が、僕にもありました ( ´_ゝ`) ナニコレ いや、そりゃあ説明は読んでたけどさ、予想以上に“地味にハード”というか。何はともあれ、本作を「ドキュメント女ののど自慢」風に書いてみると、こんな感じでございます↓
川´∀`)ノ
マダム・ベーさんは、北朝鮮に生まれました。
2003年、生活のために「1年間だけ」という約束で、
北朝鮮に夫と2人の息子を残して中国へ出稼ぎに出たものの、
騙されて、貧しい農家に嫁として売り飛ばされてしまいます。
ところが、中国人の夫は優しく、彼女を人間として尊重してくれました。
「今はただ、頑張って働こう」
中国の家族、北朝鮮の家族の生活のため、
べーさんは脱北ブローカーとなり、麻薬売買などの危険な仕事にも手を染めます。
持ち前の根性と明るさで、メキメキと頭角を現すと、
とうとう北朝鮮の夫と息子たちを韓国へ脱北させることに成功しました。
そして2013年5月、韓国で暮らす息子たちのため、
さらに国籍を得て中国の夫と正式に結婚するため、韓国に行くことを決意。
ラオスからタイを経由する過酷なルートを経て、
バンコクの難民支援センターにたどり着くと、
念願の韓国での暮らしが始まりました。
ところが、世間の風は脱北者に冷たく、
浄水器の掃除をして生活費を稼ぐ彼女の姿からは、
中国にいたころのたくましさが失われていたのです。
今では「韓国で暮らしたくない」と語るベーさんです。
2つの国、2つの家族の間で揺れる想いを込めて歌っていただきましょう、
チャン・ユンジョンで「チョホン/招魂」。
頑張ってください!
川´・ω・`)
すれ違っただけの人が
なぜだか私のもとに戻り
薔薇の棘のように残って
痛ましげに私を見つめる
ついていけば会えるのか
遠く遠い地の果てまで
あなたとならどこへでも
私はただ幸せだから
私はとても幸せだから…
最後はカラオケシーンで終わるのでした。ちなみに上の訳詞はパンフに載っていたものです。
![歌うマダム・ベー]()
なんて言うんですかね、鑑賞前はもっと「北朝鮮はけしからんな!(`Δ´)」といった告発をする内容かと勝手に思ってたんですが、実際に観てみれば「過酷な状況に置かれた女性の人生を垣間見る」という要素が強めでしてね(ちなみに「ベー」は主人公のイニシャル「B」のフランス語読み)。必死にサバイブしながらも、2つの家族の間で悩んだり、脱北者に優しくない韓国の現状に苦しんだりするマダム・ベーの姿には、「大きなシステムに翻弄される個人の無力さ」を痛感させられたというか。内容は全然違うんですが、ちょっとキム・ギドク監督の「The NET 網に囚われた男」を連想しちゃいました。まぁ、彼女自身は明るくタフなオーラを漂わせる女性なので、そんなに暗い雰囲気の作品ではないんですけど、韓国に来てからの“エネルギーが失われた姿”は切なくなったし、情感を込めてカラオケを歌うラストは可哀想で涙が出ましたね… (ノω・、) グスン
あと、「中国では脱北女性たちが人身売買の対象になっている」という話は、恥ずかしながら初めて知ったので(汗)、ストレートに衝撃を受けました。マダム・ベーの場合は、たまたま売られた先の中国人夫や義父母が優しかったため(彼女に息子たちがいることを知ると、「子どもを作りたくない」という意志を尊重してくれたとか)、すっかり仲良くなっていましたが、これはラッキーなケースのようで。“中国では社会的ステイタスが低いとされている人”と結婚させられるというのはマシな方で(「片親>貧乏>障害者>障害者でも頭の方」という身もフタもない説明が出てくる)、こちらの記事によると、性奴隷として虐待されることも少なくないというのだから、「なにこの地獄!Σ(°д°;)」と。その他、ラオスからタイを経由する脱北の様子が観られたりするというのも貴重で、非常に勉強になる映画でしたよ。
金を足首に巻いて隠したりとか、こういう描写の数々が観られたのも良かったです。
![足首に金を巻く]()
少しだけ文句を書くと、画ヅラ的に結構地味なシーンが多いので、ごめんなさい、少しだけ退屈だったというか、72分が長く感じたりもした…という心ない文章。ただ、命懸けで撮影した監督には「こんな映画、よく撮ったなぁ… (`Δ´;) ヌゥ」と感心したし、マダム・ベーにはマジで頑張ってほしいと感情移入したし(現在はソウルの郊外でバーを経営しているとか)、なかなか観られないタイプの作品だと思うのでね、機会があったら観ることをオススメしたい気がしないでもないのでした。おしまい。
ちょっと違う内容なんですが、なんとなく連想したキム・ギドク監督作。僕の感想はこんな感じ。
![]()
![]()
タメになりそうな新書。読んでみようかしら…。
![]()
![]()

原題:Madame B., histoire d'une Nord-Coreenne
2016/韓国、フランス 上映時間72分
監督:ユン・ジェホ
製作:ギョーム・デ・ラ・ブウレイ、チャ・ジェクン
撮影:ユン・ジェホ、タワン・アルン
編集:ナディア・ベン・ラキド、ポーリーン・カサリス、ソフィ・プロー、ジャン=マリー・ランジェル
音楽:マシュー・ルノー
出演:マダムB
パンフレット:★★★★(600円/薄くて小さいけど、値段の割に意外と情報量があって、頑張ってる感じ)
(あらすじ)
10年前に家族のため北朝鮮から中国へと出稼ぎに来た北朝鮮女性B(ベー)。しかし、彼女はだまされて中国の貧しい農村に嫁として売り飛ばされていた。その事実に直面した彼女は、憎んでいた中国の夫と義父母との生活を受け入れ、そこで生きていくために北朝鮮からの脱出を請け負う脱北ブローカーとなることを決意する。そして彼女は北朝鮮に残してきた息子たちの将来を案じ、彼らを脱北させたのち、彼女自身も韓国へと渡る過酷な道を選択する。(以上、映画.comより)
予告編はこんな感じ↓
70点
※この映画に関しては、こちらの監督インタビューや佐々木俊尚さんのコラムを読むと良い気がします。
「2017年6月公開で観たいと思っている映画の覚え書き」を書くために、ぴあ映画生活をチェックしていたら、本作が目に留まりまして。「北朝鮮から中国の寒村に売り飛ばされ、のちに韓国への脱北を図る中年女性“B“の姿を密着取材」「あまりにも数奇にして壮絶な彼女の生き様が、観る者に衝撃を呼び起こす1本だ」なんて説明文に興味を惹かれたんですよ。ただ、仕事が忙しいので観ることはないだろうな〜とも思っていたんですが、「ミニシアター共通スタンプラリー」をのスタンプを埋めるため、急遽観ることに決定。6月29日、渋谷シネパレスで「怪物をささやく」を観てから、イメージフォーラムに移動して、本作を鑑賞いたしました。「大変すぎる… (`Δ´;) ウーン」と思ったり。
ロビーにあった記事の切り抜きはこんな感じ。

ちなみにスタンプラリーは完遂したんですが、結局はムダにしてしまったというね…。

「マダム・ベー」というタイトルから「マダム・ヤン」を連想してお腹が空く…。そんなふうに考えていた時期が、僕にもありました ( ´_ゝ`) ナニコレ いや、そりゃあ説明は読んでたけどさ、予想以上に“地味にハード”というか。何はともあれ、本作を「ドキュメント女ののど自慢」風に書いてみると、こんな感じでございます↓
川´∀`)ノ
マダム・ベーさんは、北朝鮮に生まれました。
2003年、生活のために「1年間だけ」という約束で、
北朝鮮に夫と2人の息子を残して中国へ出稼ぎに出たものの、
騙されて、貧しい農家に嫁として売り飛ばされてしまいます。
ところが、中国人の夫は優しく、彼女を人間として尊重してくれました。
「今はただ、頑張って働こう」
中国の家族、北朝鮮の家族の生活のため、
べーさんは脱北ブローカーとなり、麻薬売買などの危険な仕事にも手を染めます。
持ち前の根性と明るさで、メキメキと頭角を現すと、
とうとう北朝鮮の夫と息子たちを韓国へ脱北させることに成功しました。
そして2013年5月、韓国で暮らす息子たちのため、
さらに国籍を得て中国の夫と正式に結婚するため、韓国に行くことを決意。
ラオスからタイを経由する過酷なルートを経て、
バンコクの難民支援センターにたどり着くと、
念願の韓国での暮らしが始まりました。
ところが、世間の風は脱北者に冷たく、
浄水器の掃除をして生活費を稼ぐ彼女の姿からは、
中国にいたころのたくましさが失われていたのです。
今では「韓国で暮らしたくない」と語るベーさんです。
2つの国、2つの家族の間で揺れる想いを込めて歌っていただきましょう、
チャン・ユンジョンで「チョホン/招魂」。
頑張ってください!
川´・ω・`)
すれ違っただけの人が
なぜだか私のもとに戻り
薔薇の棘のように残って
痛ましげに私を見つめる
ついていけば会えるのか
遠く遠い地の果てまで
あなたとならどこへでも
私はただ幸せだから
私はとても幸せだから…
最後はカラオケシーンで終わるのでした。ちなみに上の訳詞はパンフに載っていたものです。

なんて言うんですかね、鑑賞前はもっと「北朝鮮はけしからんな!(`Δ´)」といった告発をする内容かと勝手に思ってたんですが、実際に観てみれば「過酷な状況に置かれた女性の人生を垣間見る」という要素が強めでしてね(ちなみに「ベー」は主人公のイニシャル「B」のフランス語読み)。必死にサバイブしながらも、2つの家族の間で悩んだり、脱北者に優しくない韓国の現状に苦しんだりするマダム・ベーの姿には、「大きなシステムに翻弄される個人の無力さ」を痛感させられたというか。内容は全然違うんですが、ちょっとキム・ギドク監督の「The NET 網に囚われた男」を連想しちゃいました。まぁ、彼女自身は明るくタフなオーラを漂わせる女性なので、そんなに暗い雰囲気の作品ではないんですけど、韓国に来てからの“エネルギーが失われた姿”は切なくなったし、情感を込めてカラオケを歌うラストは可哀想で涙が出ましたね… (ノω・、) グスン
あと、「中国では脱北女性たちが人身売買の対象になっている」という話は、恥ずかしながら初めて知ったので(汗)、ストレートに衝撃を受けました。マダム・ベーの場合は、たまたま売られた先の中国人夫や義父母が優しかったため(彼女に息子たちがいることを知ると、「子どもを作りたくない」という意志を尊重してくれたとか)、すっかり仲良くなっていましたが、これはラッキーなケースのようで。“中国では社会的ステイタスが低いとされている人”と結婚させられるというのはマシな方で(「片親>貧乏>障害者>障害者でも頭の方」という身もフタもない説明が出てくる)、こちらの記事によると、性奴隷として虐待されることも少なくないというのだから、「なにこの地獄!Σ(°д°;)」と。その他、ラオスからタイを経由する脱北の様子が観られたりするというのも貴重で、非常に勉強になる映画でしたよ。
金を足首に巻いて隠したりとか、こういう描写の数々が観られたのも良かったです。

少しだけ文句を書くと、画ヅラ的に結構地味なシーンが多いので、ごめんなさい、少しだけ退屈だったというか、72分が長く感じたりもした…という心ない文章。ただ、命懸けで撮影した監督には「こんな映画、よく撮ったなぁ… (`Δ´;) ヌゥ」と感心したし、マダム・ベーにはマジで頑張ってほしいと感情移入したし(現在はソウルの郊外でバーを経営しているとか)、なかなか観られないタイプの作品だと思うのでね、機会があったら観ることをオススメしたい気がしないでもないのでした。おしまい。
ちょっと違う内容なんですが、なんとなく連想したキム・ギドク監督作。僕の感想はこんな感じ。
タメになりそうな新書。読んでみようかしら…。