ビジランテ
2017/日本 上映時間125分
監督・脚本:入江悠
製作:間宮登良松、江守徹、太田和宏、平体雄二
エグゼクティブプロデューサー:加藤和夫、江守徹
プロデューサー:佐藤現、平体雄二
音楽プロデューサー:津島玄一
キャスティングディレクター:杉野剛
企画協力:國實瑞恵
撮影:大塚亮
照明:新井和成
録音:田中博信
美術:松塚隆史
スタイリスト:荒木里江
衣装:越智雅之
ヘアメイク:金森恵
編集:佐藤崇
音楽:海田庄吾
音響効果:松浦大樹
助監督:松本壇
製作担当:松村隆司
出演:大森南朋、鈴木浩介、桐谷健太、篠田麻里子、嶋田久作、間宮夕貴、吉村界人、般若、坂田聡、岡村いずみ、浅田結梨、八神さおり、宇田あんり、市山京香、たかお鷹、日野陽仁、菅田俊
パンフレット:★★★(720円/監督&キャストのインタビューが良かったです)
(あらすじ)
高校時代に行方をくらました長男の一郎、市議会議員を務める次男の二郎、デリヘルの雇われ店長をしている三男の三郎。三兄弟はまったく世界の異なるそれぞれの道を生きてきた。兄弟の父親が亡くなり、失踪していた一郎が30年ぶりに突然帰ってきたことにより、三兄弟の運命が交じり合い、欲望や野心、プライドがぶつかり合う中で、三兄弟を取り巻く事態は凄惨な方向へと動いていく。(以上、映画.comより)
予告編はこんな感じ↓
80点
昨年、金欠に陥ったため、入りすぎたメルマガを泣く泣く整理した時にも「僕らのモテるための映画聖典」に関しては、血涙を流しながらも継続して購読しているぐらいの入江悠監督ファンではあるし(大げさな文章)、なんと言ってもタイトルが「ビジランテ(自警団)」となれば、ビンビンに期待しちゃうということで、前売り券を買ったんですけれども。12月上旬から公開が始まったにもかかわらず、近ごろは仕事や家庭に悩んでいるせいもあって、あまり重い映画を観る気持ちになれなくて…。で、1月下旬、やっとキネカ大森にて鑑賞いたしました。グッタリしましたよ… ('A`) グッタリ
キネカ大森には入江監督と松崎健夫さんのサインが飾ってあったりして。
「SR サイタマノラッパー」のTシャツが売られてたりもしてね。
観客は10人ぐらいだったような。
ちなみに前売り特典は「オリジナルポストカードセット」だったり。
せっかく発売日に買ったのにPCエンジンの移植版は出来が良くなくてガッカリしたーーなんて、僕の「マイゲーム・マイライフ」な話はどうでも良いとして。恥ずかしながら内容を全然知らなかったので、「地元の有力者やヤクザが幅を利かせまくる地方都市にて、地上げ絡みの陰謀に巻き込まれた三兄弟がもがき苦しんだ挙げ句、1人ぐらい死んじゃったりして、残りの兄弟が“復讐のビジランテ”と化して殴り込むのだろうよ (`∀´) タノシミー」なんて勝手な予想をしていたら、それ以上に救いがない内容でしてね…(遠い目)。
タイトルから即連想したゲーム(動画はAC版)。「スパルタンX」のリメイクって感じ。
超ザックリとあらすじを書いておくと、30年振りに姿を現した“借金まみれ&ヤク中の長男”一郎(大森南朋)が亡くなった父親(菅田俊)からなぜか遺産を相続していたため、地元有力者たちから父親の土地を当てにされていた“市議会議員の次男”二郎(鈴木浩介)と、“デリヘルの雇われ店長の三男”三郎(桐谷健太)が、先輩議員やヤクザたちから精神的にも肉体的にも追い込まれていきまして。最終的に、一郎はヤクザに牙を剥いて殺されて、二郎は兄弟たちを見捨てて“大人の階段”を登り、三郎はヤクザに復讐を試みるも撃たれて瀕死になりまして。三郎に助けられたデリヘル嬢たちがあーだこーだと呑気な会話して、終わってましたよね、たぶん。
三兄弟のうち、次男の二郎は弟も兄も見捨てて、長い物に巻かれて終わるのです。
「映画秘宝」のインタビューによると、入江監督は「地方都市のノワールをやりたいと思った」そうで。最近の良かった作品の1つに「薄氷の殺人」
を挙げられていて、確かに寒々とした雰囲気や“どこまでも続くような闇”が似ていたんですが…。そんな鬱々としたムードが漂う埼玉県深谷市っぽい地方都市を舞台に、「昔ながらの暴力的な父親」「地方で幅を利かす有力者」「地元の不良からエスカレーター式でヤクザになったような人々」「人間関係のしがらみ」「ネトウヨっぽい若者たちと移民差別」「女性をレイプ&監禁」といった要素がギュギュッと詰められていて、地方都市の暗黒面を煮詰めたような作品になっていたから、鑑賞中は「なにこの厭な映画!Σ(゚д゚;)」とマジでゲッソリしたんですが、しかし。そのダークな雰囲気が心に染みたりもしたのだから、映画というのは不思議なもの、ですな(知った風な口調で)。
しかも、また役者さんたちの演技が見事でして。一郎役の大森南朋さんは「こんな暴力的な役ができるのか! (`Δ´;)」と冷や汗が流れたし、二郎を演じた鈴木浩介さんも「ハードな板挟みの中で心が壊れそうな、でもギリギリで保っている表情」が良かったし、三郎役の桐谷健太さんも「アウトローながらも優しく弱い雰囲気」が合っていたし…。この三兄弟のあがきっぷりを観ているだけで、凄まじくハラハラさせられるのです (´Д`;) ハラハラ
大森南朋さんの“謎めいた暴力男”演技、スゴかったです…。
鈴木浩介さん、恥ずかしながら存じ上げなかったんですが、ラストの「挨拶シーン」にはグッときましたよ。
桐谷健太さん、終盤の“心が折れてみっともなくなる”あたり、最高でしたな (´∀`) ヨカッタワー
その上、脇を固める人たちもスゲー良くて。上昇志向が強い奥さん・美希役の篠田麻里子さんはいろいろな意味で体を張っていて最高だったし(昨年は「RE:BORN」でもアクションを頑張ってた!)、暴力的な父親役の菅田俊さんも安定の怖さだったし、横浜のヤクザ役の坂田聡さんも実に恐ろしかったし、一郎の情婦・サオリ役の間宮夕貴さんやデリヘル嬢たちも100点の素晴らしさだったワケですけれども。一番驚かされたのは、地元武闘派ヤクザ・大迫を演じた般若さん。あの“雄度の高いチンピラ”感は圧倒的であり、焼肉屋での串刺しシーンはゾッとしたし(桐谷健太さんの「串を抜く」演技も良かった!)、もう本当にそういう人にしか見えなかったというね… (((((°Д°;))))コワーイ
篠田麻里子さん、本作でひと皮剥けた…というのは偉そうですかね (´∀`;) スミマセン
ただ、MVPはやっぱりヤクザの大迫を演じた般若さんじゃないでしょうか。部下への絡み方とかリアルすぎてドン引き。
焼肉屋での「ちょっと優しげな歩み寄りを見せてからの串刺しシーン」はマジでビビッたし…。
刺されてからの桐谷健太さんの演技も超良かった。抜くのに時間がかかるのが味わい深い。
そしてラスト、般若さんの屋敷での死に様も完璧のひと言。靴、脱げば良かったのにネー (´・ω・)(・ω・`) ネー
「設定の根幹は明らかに『カラマーゾフの兄弟』を下敷きにしている!m9`Д´) ビシッ」という森直人さんのレビューが超タメになりながらも、ごめんなさい、高校の時に「カラマーゾフの兄弟」を読もうとしながらも途中で挫折したので微妙に理解できてない…という残念な事実は置いとくとして(「罪と罰」は読んだヨ!(o^-')b ホメテ!)。作品からとにかく伝わってきたのは、「そうせざるを得ない」という“もがき&あがき”でしてね。主役3人はもちろんのこと、我が子のためなら肉体を使うことも辞さない美希や、結局は暴力的な一郎の元に戻ってしまうサオリ、移民を憎んで放火に及んでしまった差別的な若者たちなど、割り切っているにせよ、仕方なしにせよ、浅薄にせよ、みんな生きるためにもがき、あがいていて。地方を舞台にしながらも“世界の縮図”にも見えて、本作のような視点で現世を眺めてみれば、「この世はやっぱり地獄なのかもしれないな…」なんて知った風なことを考えさせられたりした次第。その他、本作の女性たちはほとんどがハードな状況に置かれながらも、意外と精神的にタフだったりして、なんかね、こういう描き方は好きだなって思いました。
本作のデリヘル描写がリアルかどうかはわかりませんが、その精神性には好感が持てましたよ。
とは言え、物足りない部分もあって。「あえて謎のままにした」にしても一郎があれほど憎む父親から遺産を相続できた経緯が謎すぎて引っ掛かった…というだけでなく。差別的な若者たちが暴走するくだり自体はスゲー面白かったし、タイトル的にはピッタリな内容だったものの、三兄弟のエピソードとの絡みが中途半端に感じたというか。トータルして「ザ・地方の閉塞感!m9`Д´) ビシッ」ってことなのかもしれませんが、むしろvs移民問題だけで1本撮った方が良かったんじゃないかって、思ったり思わなかったり (・ε・) ドッチダヨ
不満のはけ口として移民を敵視する若者たち。決して「新しい存在」ではなくて「可視化されただけ」な気がします。
こういう「自警団」を取り上げたのが面白かっただけに、もっと掘り下げてほしかったかなぁ。
ちなみに、この訓練描写、「あるある」って感じで笑っちゃいました。
何はともあれ、宇多丸師匠曰く、入江監督には「村としての日本、村人としての日本人」という一貫したテーマがあるわけですけど、本作は「SR サイタマノラッパー」から描かれてきた「俺らこんな村いやだ!ヽ(`Д´)ノ」ムービーの究極形じゃないでしょうか。正直、個人的には精神的に弱っている状況だったのもあって、結構グッタリいたしました ('A`) グッタリ ただ、いろいろな意味で面白い映画なのは確かなので、これから上映する映画館もあるみたいだし、興味がある人は観ると良いザンス。
一番好きな入江悠監督作。僕としてはこのぐらいの田舎描写の方が好きかなぁ。
何気にかなり好きな入江悠監督作。僕の感想はこんな感じ。
読むかどうか迷っているドフトエフスキーの小説。僕には…まだ…早いカナー (´∀`;) エヘヘ
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ビジランテ(ネタバレ)
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