2023/アメリカ 上映時間114分
監督・脚本:グレタ・ガーウィグ
製作:デビッド・ハイマン、マーゴット・ロビー、トム・アカーリー、ロビー・ブレナー
製作総指揮:マイケル・シャープ、ジョージー・マクナマラ、イノン・クライツ、コートニー・バレンティ、トビー・エメリッヒ、ケイト・アダムス
脚本:ノア・バームバック
撮影:ロドリゴ・プリエト
美術:サラ・グリーンウッド
衣装:ジャクリーン・デュラン
編集:ニック・ヒューイ
音楽:アレクサンドル・デスプラ
音楽監督:ジョージ・ドレイコリアス
視覚効果監修:グレン・プラット
出演:マーゴット・ロビー、ライアン・ゴズリング、アメリカ・フェレーラ、ケイト・マッキノン、マイケル・セラ、アリアナ・グリーンブラット、イッサ・レイ、リー・パールマン、ウィル・フェレル、アナ・クルーズ・ケイン、エマ・マッキー、ハリ・ネフ、アレクサンドラ・シップ、キングズリー・ベン=アディル、シム・リウ、ンクーティ・ガトワ、スコット・エバンス、スコット・エバンス、ジェイミー・デメトリウ、コナー・スウィンデルズ、シャロン・ルーニー、ニコラ・コーグラン、リトゥ・アリヤ、デュア・リパ、ヘレン・ミレン、ジョン・シナ、エメラルド・フェネル
出演(吹替版):高畑充希、武内駿輔、朴璐美、小野大輔、斎賀みつき、沢城みゆき、坂本真綾、置鮎龍太郎、諏訪部順一、下野紘、早見沙織、本田貴子
パンフレット:★★★★(900円/インタビュー&コメント多め。音楽、監督、社会性についてのコラム計3本。写真もちゃんと載ってて、松竹事業部の良いパンフ)
(あらすじ)
ピンクに彩られた夢のような世界「バービーランド」。そこに暮らす住民は、皆が「バービー」であり、皆が「ケン」と呼ばれている。そんなバービーランドで、オシャレ好きなバービーは、ピュアなボーイフレンドのケンとともに、完璧でハッピーな毎日を過ごしていた。ところがある日、彼女の身体に異変が起こる。困った彼女は世界の秘密を知る変わり者のバービーに導かれ、ケンとともに人間の世界へと旅に出る。しかしロサンゼルスにたどり着いたバービーとケンは人間たちから好奇の目を向けられ、思わぬトラブルに見舞われてしまう。(以上、映画.comより)
予告編はこんな感じ↓
80点
※本作については、北村紗衣先生の批評やディン・デデさんのレビュー、ナイトウミノワさんの感想、町山智浩さんの解説が良かった&参考になったので、興味がある方はチェックしてみてッ!
この映画については、愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」の週刊映画時評コーナー「ムービーウォッチメン」の課題映画になったから観た…というワケではなく(不要な書き出し)。「『レディ・バード』や『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』で名を馳せたグレタ・ガーウィグ監督が、マーゴット・ロビー主演で、あの"バービー"を題材にした映画を撮る…しかもケン役がライアン・ゴズリング!」と知ったら、興味が湧きまくりまして。前売り券(ただのケンver.)を購入して、それなりに公開を楽しみにしていたのです。で、ユナイテッド・シネマとしまえんにて字幕版、イオンシネマ板橋にて吹替版を鑑賞いたしました。とても面白かったです… (´∀`;) アハハ
「ただのケンver.」のムビチケはこんな感じでした。
1回目(字幕版)は、タピオカミルクティーを摂取しながら2番スクリーンで鑑賞しまして。
2回目(吹替版)は、フレーバーソーダ(白桃)を飲みながら12番スクリーンで観たのです。吹替版、良い出来でしたよ。
映画を観た人が「そんな話だったっけ…?(`Δ´;)」と思う程度に、雑にあらすじを書いておきますと。平和な「バービーランド」のドリームハウスで暮らしていたバービーでしたが、ある日、ふと死について考えるようになってしまうと、自分の体や生活にさまざまな異変が発生。問題を解決すべく、変てこバービーの助言を受けて、ケンと一緒に「現実の人間世界」を訪れてみれば、バービーたちの影響によって世の中にガールズパワーが溢れているはずが、実際は「家父長制に支配された男性優位社会」な上に、バービーたちがまったく憧れられてない&尊敬されてなくてショックを受けまして。しかも、一応は自分の持ち主だったサーシャ…の母親グロリアに出会えたので(この女性が「死について考えるバービー」を考えたせいで、今回の異変は起きてた)、マテル社に追われながらもとりあえず自分の世界に帰ってみれば。「男社会」に魅了されたケンが「(有害な)男らしさ(トキシック・マスキュラティ)」を広めたせいで、ケンたちだけでなくバービーたちも洗脳されてしまい、女性中心だったバービーランドが、マチズモ全開の「ケンダムランド」に変貌していたのです!Σ(゚д゚;し ナンダッテー!
なんとなく序盤のダンスパーティーのシーンで流れるデュア・リパの「Dance The Night」を貼っておきますね↓
バービーは、ケンによって自分のドリームハウスを「MOJO Dojo Casa Hause(訳すと「魅力を取り戻すための道場家屋敷」みたいな感じ? 字幕では「ケンの筋肉ムキムキマッチョハウス」みたいな感じだったような)」へと変えられてしまい、すべてを奪われて絶望するんですけれども。「グロリアのスピーチ」によって、「完璧じゃなくても私は私ッ!Σ(゚д゚ し クワッ!」と開眼! 「グロリアのスピーチ」にはバービーたちを正気に戻す効果があったため、「(有害な)男らしさ」を逆に利用しつつ、次々とバービーたちの洗脳を解くと、最終的にはケン同士を争わせている隙にバービーランドを奪還だッ!ヽ(`Д´し ウォォォォッ! そして、バービーがケンの気持ちに寄り添うと、ケンも心から反省&「自分は自分!Σ(°д° ) クワッ!」ということに気付き、バービーへの依存から脱却しましてね。最終的には「バービーの生みの親」ルース・ハンドラーに導かれ、バービーは人間になったようで、婦人科を訪れて終わってましたよ、確か(なお、私はこのシーン、「人間になったので、婦人科に来ました」ってぐらいの意味だと思いました)。
エンドクレジットで流れるNicki Minaj & Ice Spiceの「Barbie World (with Aqua)」を貼っておきますね↓
日本公開前から「バーベンハイマー(Barbenheimer)」騒動が起きて叩かれたり、公開後は奥浩哉先生の感想が叩かれたり、内容を巡って「あーでもない!川`Д´)ノ」「こーでもない!ヽ(`Д´ )」とさまざまな感想が飛び交ってたりと、なかなか盛り上がっている本作ですが…。正直、当ブログは低偏差値が売りなのでね、難しい話は書けませんよ(キッパリ)。ただ、字幕版と吹替版と、2回も観に行っているように、私はこの映画がとても好きだったりします。そりゃあ一般的なコメディよりも社会問題を扱っている感がなくはないので、そういう要素が苦手な人もいるかもしれませんが、私はコメディ映画として超楽しめたのです (´∀`) ウフフ
もうね、バービー役のマーゴット・ロビーとケン役のライアン・ゴズリングの演技が最高でしてね…(しみじみ)。笑ったり踊ったり歌ったりションボリしたりする2人を観ているだけで本当に面白かったし、真剣なシーンではグッときた。この2人をキャスティングした時点で、ある程度の勝利は確定してたんじゃないでしょうか(って、もともとマーゴット・ロビーが立ち上げた企画ですがー)。特にライアン・ゴズリングのコメディ演技は素晴らしいとしか言いようがない。本作には「有害な男らしさ」を扱ったギャグが大量に出てくるんですけど、1つ間違えば、かなり嫌な奴に見えちゃうと思うんですよね。でも、彼特有のチャームさが、良い意味で観客を「コイツは仕方ないな… (`Δ´;) ヌゥ」と呆れさせるというか(もちろん脚本&演出の力もありますがー)。あの「女性に時間を聞かれたことの喜びを延々と語りつつ、いくつも腕時計をはめてるのを見せる場面」とか、大好きでした。しかも、相変わらず歌がほとばしるほど上手くて、終盤の「I’m Just Ken」の歌唱は笑いつつもグッときちゃいましたね〜。
ライアン・ゴズリングが歌う「I’m Just Ken」のMVを貼っておきますね↓
そして、グレタ・ガーウィグ監督とノア・バームバックによる脚本もお見事。私的に本作は、「強烈なフェミニズム映画」とか「男女の分断」とかを描いているのではなく、「理想像への固執」や「ステレオタイプの押し付け」を否定しているんじゃないかと。もちろん「有害な男らしさ」が滑稽かつ大量に展開されるので、いわゆるヘテロ男性の私的には、笑いながらも居心地が悪くなったり胸が痛くなったりするシーンが少なくなかったけど(特に「ゴッド・ファーザー」のくだりがッ!)、バービーランドでのケンたちはオマケ扱いとか「家がない」とかちゃんと同情できるようにもなってたし(男性社会の女性のような立場=ミラーリングだそうで)、バービーとケン、どちらの立場にもそれなりに共感できるように作られていたんじゃないかしらん。つーか、結局は「寓話」的な作品なので、いろいろとおかしな部分もあるし、バービーとケンが迎えるラストは「こんなの現実では難しいだろ」と思わなくもないけど、ケンに感情移入した人は心療内科とかでカウンセリングとか受けたら良いと思いますよ(私は1〜2ヵ月に1度のペースで受けてます)。
大体、「愛しのバービーガール」を訴えるような心の狭いマテル社に(サラリと失礼な文章)、こんなメタ全開かつマテル社を若干ディスるようなストーリーを受け入れさせたのも感心。ウィル・フェレル演じるバカすぎるCEOにはかなり笑わされましたよ(特に「私は女性から生まれたし…」みたいな釈明をバービーにするシーンとか、「差別的な人がする言い訳」がギッシリ詰め込まれていて、最悪だけど最高でした)。となると、ひと昔前よりマテル社の懐も深くなったのかもしれませんな…。その他、実物代のオモチャ的なバービーランドの美術は観ているだけでも楽しかったし(治療室になる救急車がカッコ良かった!)、音楽も素敵だったし、本作は男性優位社会の象徴として半裸のマッチョがかなり出てくるので、私的には眼福でございました。ジョン・シナのカメオ出演は笑ったし、ビーチでウィル・フェレルがバービーたちの行方を訪ねた「サイドレイズをしている男」の筋肉はかなり良かったですな (〃∇〃) コノミ
なお、こちらの記事によると、現実のマテル社は11名の取締役のうち4名が女性だそうな。
かつてマテル社に訴えられたという、アクアの「愛しのバービーガール」を貼っておきますね↓
ただ、率直なことを書くと、好きではない点もありました。「マーゴット・ロビーが言っても説得力がない」的なナレーションは不要に感じた…というだけでなく。まず、「問題を言語化することが大事」ということを描くために、洗脳を解くために「グロリアのスピーチ」が効果を発揮するという展開にしたんでしょうけど、なんか「わかりやすいフェミニズムの本」を読まされてるような説教臭さはちょっと苦手でしたね…(でも、このシーンで私の前に座ってた男4人組が劇場を出て行ったのは笑った)。グロリアがイラストを描いたことでバービーが影響を受けた→想像力やら何やらで世界を変えるのかと思ってたので、ケンたちを騙す演出は楽しかったものの、「説法だけ」ってのはかなり拍子抜けしましたよ。それと、描きたいことはわかるけど、「飲食店で働く女性たち」に対する蔑視を感じてイラッとしたし、ケンたちは一応は選挙に則って世界を変えようとしているのにバービーたちが「投票させないことで勝つ」のはどうかと思ったり(人口ではバービーの方が勝ってるんだから、普通に選挙して勝てばいいじゃん)。
だがしかし。何より失望したのは映画序盤、変てこバービーが言う「プロテインで作ったニセ筋肉」みたいな台詞(吹替版だと「プロテインで作ったインチキムキムキ筋肉」だったような)。原語の表現がわからないので、翻訳が悪いのかもしれませんけれども。まず、プロテインは単なるタンパク質=栄養素でしかないので、「プロテインで作ったニセ筋肉」というのはありません。これがステロイド(筋肉増強剤)ならスムースに納得できたんですが…。これをなぜ問題視するかって、アメリカではわかりませんけど、日本では昔から「プロテイン=筋肉増強剤」と勘違いする人が少なくなく。その誤解を解くのが結構面倒くさかった…というのは、昭和世代のトレーニーなら経験したことがあるのではないでしょうか。私は妻とお義母さんの栄養を補助するために、彼女たち用のプロテインを毎月購入しているのですが、やはり最初は上記のような誤解があって飲みたがらなかったのです。要は「科学的根拠のないデマを飛ばすな」って話。
唐突ですが、変てこバービー、このウェズに似てたような…って、どうでも良いですな(「マッドマックス2」より)。
百歩譲って、じゃあ「プロテインをアホみたいに飲んで作った無駄な筋肉」的な意味合いだったとしても、それはそれでトレーニーと筋肉に失礼。実は私、数年前に一部で話題になった「男らしさの終焉」という本の著者グレイソン・ペリーが大嫌いでして。いや、かつてマチズモに染まってた男がフェミニズムを学んで、過去の己を否定するという内容自体は面白かったし、良いこともたくさん書いてあるんですが…。筋トレを辞めた彼は、「今日のサービス産業の労働者にとって、ベンチプレスで百五十キロのウェイトを持ち上げる筋力はまず必要ない」とか「モリモリの筋肉はセンスが悪い」なんてことも書いていて。いやいや、アンタがもう筋トレに興味がないのは別に問題ないけどさ、その筋力が必要かどうか、その筋肉のセンスが悪いかどうかは、他者が勝手に決めることじゃねーだろと。
本作の変てこバービーの発言が、もし「プロテインを飲んで作った筋肉」を揶揄しているのだとしても、単に「お前の趣味で他者を裁くな」って話じゃないですか。まぁ、「グレタ・ガーウィグ監督はわかってて、わざとそうした(女性側の「男性への無神経な発言」として、あえて入れた)」的な見方もできるのかもしれませんが、普通に間違った情報を撒いて害悪だし、老若男女、プロテインを飲んで頑張って鍛えている人に失礼じゃん(あと、プロテインメーカーにも失礼)。なんて言うんですかね、私、この映画、基本的には大好きなんですよ。でも、あの台詞だけは「全方位に気を遣っている風なのに、興味のないところは結局舐めてる」ように思えて、本作がよく出来ている分、腹が立った…って、伝わりますかね。ううむ、書きながらも「あまり賛同を得られない文句」という雰囲気がムンムン漂う感じ、ちょっと「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」の感想をアップした時を思い出したというか。ああん、心が狭くてすみません… (ノω・、) スミマセン
「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」より。この「大学でダサくならないでね」スピーチで一気に冷めたんですよね…。
そんなワケで、いろいろと文句を書きましたが、わかってくれる人が少なそうなので声が大きくなっただけで、実際のところはそこまで気にしてないというか(今さらな文章)。基本的には、ケンたちの愚かな行動に自分を重ねて胸を痛めつつ、とても面白かったです… (´∀`;) アハハ 本作は「フェミニズム映画的にはいろいろと雑」みたいな意見があって、確かに私的にもそういった問題を直球に扱う作品の方が納得度が高くて好みではあるんですが(今年なら「ウーマン・トーキング 私たちの選択」と「アシスタント」が超ヘビーながら素晴らしかった!)、多くの人にわかりやすく面白く問題提起をするという点では、とても優れている映画だと思います。おしまい。
本作のデジタル盤のサントラ。買っちゃいました (〃∇〃) ウフフ
グレタ・ガーウィグ監督の長編デビュー作。私の感想はこんな感じ。
グレタ・ガーウィグ監督の2作目。好きだけど、もっと長い尺(ドラマとか)でやってほしかったという気持ち。
マーゴット・ロビーの主演作で一番好きなのはこれ。私の感想はこんな感じ。
ライアン・ゴズリングの主演作で一番好きなのはこれ。私の感想はこんな感じ。即死だったから大丈夫!